ダイヤモンド流通戦略セミナー2014報告
ドラッグストア 顧客データ分析・活用戦略
オムニチャネルの競争激化で変わる
新・成長ビジネスモデル
スマートフォン、タブレットの普及で、個人の情報アクセスが容易になり、それが生活者の購買行動の変化を引き起こしている。ダイヤモンド・フリードマン社ではこのほど、東京・御茶ノ水のソラシティ カンファレンス センターでドラッグストアのオムニチャネル化をテーマに「ダイヤモンド流通戦略セミナー」を開催。最先端のデータ分析や先進的な米国のドラッグストア事情などに参加者が聞き入っていた。
変化する消費者の購買傾向
価格、価値に求めるワオ効果
オムニチャネルは、よくいわれているオンライン・リテイラーに対抗するリアル店鋪の戦略ではく、消費者を中心として全方向に購買のチャンスを提供し顧客との関係を深めるという事である。消費者は様々な販売チャネルを利用しており、その全てに対応しなければ機会損失につながるというわけだ。そうした変化が米国で加速している。消費者の変化をあげれば、豊かさの象徴である消費の時代は大型店舗、幅広い品揃えが一般的だったが、ニュー・ノーマルといわれる時代では最適な広さと品揃えに変わった。
また、欲しい物を次々購入するスタイルから必要な物だけを購入するようになり、実用性を重視してNBからPBへの志向が強まるなど多くの変化が起きている。
価格や価値についても、商品性やサービスが想像するよりよいと感じた場合の驚き=ワオ効果が重視され、すぐにどこででも手に入るという利便性、健康指向、顧客サービスの充実のほかエコへの配慮といった社会性も重視されている。
これまでオンライン販売の増加で店舗にとっては、ショールーム化することが脅威とされてきた。実際に商品説明を聞いたうえで、価格比較サイトで確かめてネットで購買する消費者も少なくない。そこで小売業は在庫統合でリアルでもネットでも購入できる環境を構築するほかオンライン現金払いを取り入れるなど様々な対抗策を打ち出している。
オムニチャネル化の主役になっているのは、1975年から90年頃までに生まれた、いわゆるミレニアル世代。デジタル世代でありスマホを使いこなし、買物経験を重視する傾向がある。デジタルクーポンは好むが紙のクーポンは利用しない、まとめ買いはしないという特徴もある。また、彼らはSNSを利用してブランドとの関係を持っている。そういう消費者層を相手にするために、消費者とショッパーは異なるという考えも浸透してきた。80年代半ばからP&Gが唱え始めたファースト・モーメント・オブ・トゥルース(FMOT)は、「ブランドは店頭の棚の前できめる」だったが、Googleによれば今では常に情報に触れていることでゼロ・モーメント化したZMOTだということになる。
大手ドラッグは規模拡大
独立系は患者との接点重視
市場変化の中で、米国のドラッグストア(DgS)業界も変革にチャレンジしている。DgSはネットの影響をあまり受けていないという見方もある。米国ではチェーン・ドラッグの売上2615億ドルに対して、個人経営を含めた独立系は862億ドルと小さいものの成長は続いている。調剤に対して患者と薬剤師のつながりが重視されているためだ。ウォルグリーンズでは12年9月にロイヤリティ・プログラムを始め、1年足らずで9200万人の会員を獲得。CVSケアマークのロイヤリティ・プログラムは15年の歴史があり7000万人が会員となっている。さらにストアブランドの充実や大手卸との統合などで規模拡大を続けている。
米国ではOTC薬についての販売規制がない。そのためDgSでもディスカウントストア(DS)でも販売でき、オンライン販売も一般的。全体の市場規模は293億ドルに達する。今のところOTC市場に対するオンライン・リテイラーの脅威は少ないが、一例としては、ビタミンサプリなどの日常健康商品や化粧品では、なくなりそうなタイミングで定期購入を勧めるというケースが増えている。家電などでは、オンライン・リテイラーが台頭しており、同じ変化がドラッグには来ないという保証はない。
未来のDgSは、ヘルスケアのスペシャリストとして、患者との関係を重視するパーソナライズされた販促、利便性を高めたオムニチャネルでの顧客対応が不可欠になっていくのである。