セブンペイ、9月末にサービス終了の理由とこれから
「廃止」の決断に至った3つの理由
これだけ大きな事件を引き起こしたとはいえ、リリースからわずか1カ月という短期間で「廃止」という重い決断がスピーディに下された理由は大きく3つ。配布されたリリースの内容から要約すると、①すべてのサービスを再開するに足る、抜本的な対応を完了するには相応の期間が必要、②サービスを継続するとすれば「利用(支払い)のみ」という不完全な形になる、③7payに対する顧客の不安はすぐに拭えない、というものだ。
そもそも、不正アクセスを許した大きな原因はセキュリティの脆弱性にある。とくに、同様のバーコード決済サービスのほとんどで導入されている本人確認方式「二段階認証」が採用されていない点には、世耕弘成経済産業大臣も「(採用は)基本中の基本」と苦言を呈するなど、マスコミのみならず担当省庁からも大きな批判を浴びていた。
これについて、サービスを運営する㈱セブン・ペイの奥田裕康取締役営業部長は、「利用状況をモニタリングすることで、(本人認証の)敷居を多少低くしても(安全性を)カバーできるという、不適当な仮説に基づいていた」と認めた。
セブン&アイHDはこれに加えて、開発体制や意思決定に関するガバナンスについても不備があったと分析。弁護士を中心とした検証チームを立ち上げ、原因究明と再発防止策の策定を行うとした。
「キャッシュレス化推進」の姿勢に大きな変化はなし?
とはいえ、セブンペイの“消滅”が確定した今気になるのは、「デジタル戦略の強化」を掲げるセブン&アイHDが、その本丸ともいえるペイメント、とくにキャッシュレス決済の領域でどのような動きを見せるのかという点だろう。
結論から言うと、大幅な方向転換は行わない模様だ。後藤副社長は会見で「スマホ決済については、広く世の中に浸透していくサービスになるのは間違いない。セブンペイは廃止するが、そのほかのスマホ決済についてはさまざまなプレイヤーと連携しながら提供していきたい」と表明。セブンペイの導入と同時に対応を開始した「PayPay」や「LINE Pay」など外部の決済サービスは引き続き提供することで、キャッシュレス化の流れには対応し続ける構えだ。
そのうえで、具体的な時期などについては白紙と前置きしながらも、「体制を整えて、もう一度バーコード決済サービスに参画できないかチャレンジはしていく」(後藤副社長)と、“リベンジ”も匂わせた。
しかし、日本を代表する小売企業の1つであるセブン&アイHDの今回の失策が世の中に与える影響はあまりに大きすぎる。同社に対する信頼が低下するのはもちろん、「キャッシュレス決済」という仕組みそのものに不信感を抱く消費者が増える可能性も否めない。キャッシュレス化の流れに水を差す結果となったセブンペイの不正アクセス問題。収束にはまだまだ時間がかかりそうだ。