「共感するAI」が小売業の対顧客、対従業員関係を激変させる!
エンパシック(empathic)とは「共感する能力があること」を意味する。2024年は、「共感するAI」(エンパシックAI)が1つのトレンドになると、GDRクリエイティブインテリジェンスCEOのケイト・アンケティル氏はNRF2024で語っている。例年NRFザ・ビッグショーでグローバルリテールトレンドを発表する注目の人物が熱いまなざしを向ける「エンパシックAI」とは何か、この言葉に着目し、米国の状況を探ってみた。
「共感するAI」とは何か
「人工的共感」とも呼ばれるエンパシックAIは、機械学習や自然言語プロセス、コンピュータビジョンなどを使って訓練されたデータを基にヒトの感情を認識し、その感情に共感する形でロボットが返答することである。
アンケティル氏は、「現代生活はあまりにも複雑なのでデジタル・コパイロット(チャットボットなどAIによるサポート。マイクロソフト社のブランド名)が不可欠だ」と指摘した。
さらに、いずれ個人もブランド(企業)も独自に「パーソナルAIアシスタント」を持つようになると予測した。
セッションでは、オープンAI社の生成AI「チャットGPT-4」のライバルとも言われるインフレクションAI(Inflection AI)が開発し、昨年5月にリリースしたAIチャットボット「パイ(Pi)」が紹介された。
同社は6月にはマイクロソフト、NVIDIA他から総額13億ドルの資金調達を果たし、「誰もが使えるパーソナルAI」を目指している。「パイ」はパーソナルアドバイザーとして、コーチ、クリエイティブ業務のパートナー、何か目標を掲げた時に応援してくれる人の役割が期待されている。
声やアクセント(訛り)を変更することも可能だ。メディア「ファーストカンパニー」は昨年9月に共同創業者のムスタファ・スリマン氏にインタビューし(※1)、パイがチャットGPTと異なる点は感情を理解する点だと解説している。
チャットGPTがより不特定のユーザーを想定しているのに対し、パイはユーザー個人のニーズに焦点を当てているようだと評している。
※1 https://www.fastcompany.com/90959853/mustafa-suleyman-inflection-pi
医療分野では「対患者」で既に導入済み
アンケティル氏の講演では小売業界でのエンパシックAIの具体的な事例