国内最大級のアナリティクス専門カンファレンス『SAS FORUM JAPAN 2020』(2020年11月25日開催)では、デジタルトランスフォーメーションを実現する最新のソリューションが紹介された。本フォーラムにおいては「流通・小売」部門では多彩なゲスト講師が登壇。流通・小売部門の5セッション分のレポートを紹介する。
配送現場における2つの課題
私は名古屋大学情報文化学部を卒業後、博士課程に進み、「組み合わせ最適化アルゴリズム」を専門としていた。今注目されているAI(人工知能)の一部の構成要素と言われる技術の研究開発を行っていた。アカデミックな技術と実社会の課題を結びつける架け橋になりたいとの思いで2015年にオプティマインドを設立した。
当社は、世界の「ラストワンマイル」を最適化することをミッションに掲げている。ラストワンマイルとは一般的に、物流の最終拠点から店舗や家庭の戸口、エンドユーザーまでの最終区間のことを指す。われわれはその分野について、どの車両、トラックがどの訪問先、配送先を、どういった順でどんなルートで訪問、配送するのが最適なのかを計算するアルゴリズムと、それをもとに現場の方々が使える配車システム、画面を開発、ソフトウェアとして提供している。
ラストワンマイルの配送現場における課題は2つある。
1つ目は「属人的業務」であること。配送は配車マンが業務を行っている。受注伝票からどの車両に、どういった配送先を割り当て、どの順に行ってもらうかを決めている。多くの場合、ベテランが担当、その人の能力に頼っているのが現状だ。配送業務におけるドライバーにも同じことがいえる。
2つ目は「人手不足」。有効求人倍率は現在、3.14倍と高く、とくに若手人材が集まらないのが大きな問題となっている。 これらを解決するには、標準化と省人化というアプローチが有効である。
分刻みの精度を実現
実際に配送ルートの最適化を進めるにあたっては難しい点が複数ある。
まず「細かい条件」があること。荷量に複数の単位があるほか、常温や冷凍など温度帯も考慮しなければならない。また再送先での荷下ろしの時間も頭に入れておく必要があるほか、左付けやUターン禁止という条件もある。
次は「様々な変化」。朝は混んでいても、夕方は空いているという道もある。また突発的に渋滞することもあれば、道そのものが複雑で、どこを通ったかかがわかりにくいケースもある。
最後に「分刻みの精度」が求められること。配送指定時間がネックで、少しでも遅いとアウトですぐにクレームになる。移動時間を計算しながら、停車する場所も考え、先に届ける荷物も考えながら、ドライバーには臨機応変の判断が求められる。
これらに対し、当社のサービスでは次のようなアプローチによりクリアしてきた。「細かい条件」に対しては、現場の方からもらったニーズをもとに、ひたすらアルゴリズムを拡張してきた。その結果、前述の左付けやUターン禁止を考慮したルートを出せるようにした。
「様々な変化」には、リアルタイム性を持たせた。つまりあるドライバーが出発した時間はもちろん、今、予定している配達が何件まで終わっているかも確認できるようにしている。
「分刻みの精度」については、あいおいニッセイ同和損保が持つビッグデータと当社の配車システムを連携、最適、最短、効率的ルートの作成を実現している。当社のサービスを利用するお客さまからは、高評価をいただいている。
さてラストワンマイルの姿、取り巻く環境はさらに変化するだろう。今から5年後、2025年にはどのようになっているか、私の予想を少し述べたい。
日本の人口は減少しており、マクロ的には物量は減っていく。そのため幹線や大型倉庫はマクロ的な影響を早く受け、市場が縮小するだろう。もちろんラストワンマイルも人口減少に伴い、減るものの、しばらくは成長すると考えられる。
当社では、そのようなラストワンマイルに特化し、ルート最適化のためのサービスを提供、今も投資、研究を続けている。導入を検討している方は、当社ホームページのお問合せコーナーから連絡いただきたい。
各プログラムの詳細
下記画像リンクから、各プログラムの詳細をご覧いただけます。