New Normal における流通業のAI・アナリティクス活用アプローチ

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国内最大級のアナリティクス専門カンファレンス『SAS FORUM JAPAN 2020』(2020年11月25日開催)では、デジタルトランスフォーメーションを実現する最新のソリューションが紹介された。本フォーラムにおいては「流通・小売」部門では多彩なゲスト講師が登壇。流通・小売部門の5セッション分のレポートを紹介する。

New Normal における流通業のAI・アナリティクス活用アプローチ

今後は経験、勘が通用しない

流通業がニューノーマルに対応するにあたり、AI(人工知能)やアナリティクスをどのように活用すべきか、またその際のポイントを紹介する。最後に、新型コロナウイルスにうまく対応している企業の事例にも触れたい。

最初にコロナ禍、流通業がいかに前例のない環境下でビジネスを行っていたかについて、海外のある食品スーパー(SM)企業を例に説明する。

売上推移を見てほしい。この企業が事業展開する国では新型コロナウイルスの感染者が拡大したことで、今年3月後半から需要の大きな変化が起こった。移動制限が始まり、巣ごもり需要、また一部買い占め等の動きもあった。

売れた商品のうち主食のカテゴリーに注目すると、パスタ、その他麺類、また米は短期間のうちに10倍以上の需要が発生。突発的な需要によって平均仕入れ単価は高騰した。在庫不足にも陥り、その後、回復にも長い時間がかかっている。

小売業を取り巻くビジネス環境は、かなり厳しいことかがわかる。

ここで小売業の代表的な意思決定フローを確認する。それは次のようなものだ。まず自社の顧客層を設定したうえでニーズを把握、一方、自社の強み、弱みを明らかにする。次に財務計画、52週MD計画を立案、店舗特性に応じた品揃えや店舗レイアウト・棚割りを作成する。さらに安全在庫、発注数、発注頻度などを決め、最終的に販促計画を立てるという流れである。

従来、一連の業務は、過去の成功体験や担当者の勘と経験、度胸で意思決定されていた。だがニューノーマルにおいては通用しない。そのなか高まっているのはAIへの期待度だ。人の意思決定をAIに置き換えるだけでなく、データから人の気づかない傾向や課題を抽出、AIが意思決定を支援することも重要な役割だと考えている。

With/Afetr COVID-19
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活用する際の5つのポイント

ではAI、アナリティクスを活用する際のポイントとはどのようなものだろうか。ここでは5つ挙げる。

第1は「バリューチェーンで活用する仕組み」。どの業務であっても個別最適のために活用するのではなく、バリューチェーン全体で分析を連動させ、一貫性のあるアナリティクスによる意思決定が必要となる。

第2は「精度の高い需要予測の実現」。流通業においては、将来予測に基づいた意思決定が求められる。そのため精度の高い需要予測が不可欠な要素であるのはいうまでもない。

第3は「リアルタイムデータの活用」。消費マインドや購買行動が刻々と変化しており、常に最新データに基づいたアナリティクスによる意思決定をすべきだ。

第4は「大量モデルを高速に作成」。さまざまな需要パターンに対応するためには、複数のアルゴリズムを組み合わせた大量モデルを高速に処理する仕組みが必須だ。

第5は、「環境変化に対応できる仕組み」。予測・分析モデルは一度構築したら終わりではなく、ビジネス環境や消費者の変化に応じて修正・変更されなければならない。以上がSASの考える重要な要素である。

AI・アナリティクス活用のポイント
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最後に、新型コロナウイルスにうまく対応した企業を紹介する。一例はグローバル大手の、GMS企業が在庫の最適化を進めた事例だ。同社では、まずコロナ禍の影響を受けた範囲を特定した。ヨーロッパを中心に事業展開しているため影響は全社に及び、ほぼすべてのアイテムの予測を作り直さなければならなかった。

精度を上げるためGoogleのデータ、またミクロ経済データ、さらに新型コロナウイルスの感染予測といった外部データを収集、それらを組み合わせた複数の予測モデルによってアイテム予測を再構築した。その結果、従来のモデルではコロナ禍において20%以上の誤差率が発生していたが、1ケタにまで精度を上げることができた。

ほかにもAI、アナリティクスを活用することで成果を出している企業は少なくない。ぜひ参考にしていただきたい。

各プログラムの詳細

下記画像リンクから、各プログラムの詳細をご覧いただけます。

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