原料調達から売上予測まで 衛星データの活用は食ビジネスをどう変えるか?
売価や需要予測にも応用可能!?
ここまで見てきたように、原料調達のさまざまなフェーズで衛星データが活用されつつあるが、さらに一歩進んだ用途として、売価や需要予測への応用も注目されている。
たとえば、地球規模での小麦の生産量や、日本全国の特定野菜の生産動向を定点観測することが可能だ。農作物に限らず、実際に原油の在庫量を衛星から推定し、公式レポートよりも早く週次で公開するサービスを提供する企業も登場している。
こうしたデータは、先物取引への活用にとどまらず、マーケティング分野でも活用が進んでいる。たとえば24年6月、電通(東京都/五十嵐博社長兼グローバルCEO)は宇宙航空研究開発機構(JAXA)およびJA嬬恋村と連携し、衛星データを用いた「キャベツの生育予測モデル」の実証実験を実施。これは、キャベツの生産量を予測することで、価格や供給の変動に先回りし、価格の安定化、生産者の収入確保、さらには農産物の廃棄ロス削減を図ることを目的としている。

今後は、キャベツに限らず、さまざまな農作物や原材料についてもより高精度な生産量予測が可能になることで、小売業における販売計画や需給調整の精度向上に大きく貢献することが期待されている。
意思決定の精度を上げるために、人工衛星を活用したデータ収集は企業の事業戦略に欠かせないツールとなるだろう。






