原料調達から売上予測まで 衛星データの活用は食ビジネスをどう変えるか?

2025/06/19 05:00
中村 友弥 (宇宙ビジネスメディア「宙畑」編集長)
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昨今、食品業界において地球観測衛星の撮影データ(衛星データ)の活用が本格化している。たとえば大手食品メーカーなどが、原料調達や農業分野での活用を進めており、取り組みの範囲が広がりを見せている。衛星データは実際、どのように活用されているのか。『宇宙ビジネス』(20252月 クロスメディア・パブリッシング)の著者・中村友弥氏に解説してもらった。

iStock:512144122

国境を越えて地上の状況を観測できる衛星データ

 衛星データの最大の特徴は、国境に関係なく地球全体を無人で撮影できる点にある。ドローンや航空機では難しい、広範囲かつ継続的な観測が可能だ。さらに、撮影されたデータは、多くの場合アーカイブとして保存されているため、過去のデータと比較することもできる。

 ただし、衛星は航空機やドローンほど地表に近い高度を飛行しないため、解像度には限界がある。商業衛星から現在提供されている中で最も高精細な画像でも、人の影がうっすら確認できる、車の台数が数えられるといったレベルだ。

19年9月6日の衛星画像。右下には東京ディズニーリゾートがあり、駐車場に停まっている車の数や、新しく建設中のエリアを確認できる

 このように解像度には限界があるが、広範囲を継続的に観測できるという強みが衛星データにはある。また、衛星データは単なる画像にとどまらず、人間の目には見えない光の波長も捉えることができる。これにより、植物の活性度や地表の温度といった、肉眼では得られない情報も宇宙から測ることができる。

植物が活性化しているところほど赤くなる

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記事執筆者

中村 友弥 / 宇宙ビジネスメディア「宙畑」 編集長
2017年に宇宙に特化した宇宙ビジネスメディア「宙畑」の立ち上げに関わり、18年に宙畑が衛星データプラットフォームTellusのオウンドメディアとなったタイミングで編集長に就任。19年には宙畑の立ち上げメンバーとsorano me(城戸彩乃社長)を共同創業し、宇宙技術の利活用促進に従事。著書に『宇宙ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)がある。
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