原料調達から売上予測まで 衛星データの活用は食ビジネスをどう変えるか?
衛星データの活用事例①
食品メーカーの原料調達における衛星データ活用
衛星データはさまざまな分野で活用が進んでいるが、ここでは原料調達に関連する事例を3つ取り上げる。最初の事例は、農業分野における原料の品質および生産性の向上だ。
衛星データを用いることで、圃場(ほじょう:農作物を栽培する場所)の土壌水分量や作物のタンパク質含有量、生育スピードといった多様な情報を把握することができる。これにより、いつ、どの程度の水や肥料を与えるか、最適な収穫時期はいつかなど、営農の判断をデータに基づいて行えるようになる。
たとえばカゴメ(愛知県/山口聡社長)は、この衛星データを技術継承にも活用している。ケチャップ用トマトの栽培のため、同社はポルトガルに大規模農園を所有していたが、そこではベテラン農家と経験の浅い農家の間で生産量に大きな差が生じていた。
そこでカゴメは日本電気(NEC:東京都/森田隆之社長兼CEO)と協業し、衛星データを活用したトマト栽培に着手。ベテラン農家の知見とデータを組み合わせて営農支援サービスを開発し、その成果を検証するため、北イタリアで実証実験を行った。
その結果、このサービスを使用した区画では、使用する灌漑水を約19%削減しながら、収量を約23%増加させるという成果を上げた。

同様に、日本国内でも、原料品質の向上に向けたデータ活用が進んでいる。たとえば山口県では、県と農業関係者が連携し、契約企業が求める品質を満たす小麦を安定的に生産するため、衛星データを活用。結果として、品質基準を満たす小麦の栽培比率を大幅に改善することに成功している。






