2019年4月9日の記事で、「米スターバックスがビットコイン決済を導入か!?」と紹介した。その流れがついに現実的になろうとしている。スターバックスら米流通各社が、iPhoneでビットコイン決済ができるサービスに対応すると発表したのだ。これを受け、世界の決済が暗号資産(仮想通貨)の導入へと大きく傾きはじめている。日本の小売業にとっても、暗号資産との付き合いは不可避となるのも時間の問題となってきている。
米大手15社がスマホアプリ「SPEDN」導入へ
日本時間の5月14日、米ペイメントスタートアップのFlexa(フレクサ)と、暗号資産(仮想通貨)取引所の「Gemini(ジェミニ)」が、暗号資産からシームレスに決済が可能になる小売店向けのモバイルアプリ「SPEDN(スペン)」を発表した。さらに、米コーヒーチェーン大手のスターバックスや、米食品スーパー大手のWhole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)など米国を代表する15社が、それぞれのサービスにおいて同アプリでの決済に対応することが明らかとなった。
スターバックスは世界的なコーヒーチェーンであるだけでなく、今や米国における電子決済のメーンプレイヤーとなっている(前回の記事を参照)。
また、ホールフーズはEC最大手であるアマゾンの子会社としても知られる。アマゾンでは、本、食品、電化製品、動画や音楽といったさまざまなコンテンツを同一のプラットフォームで提供している。将来的にアマゾンがSPEDNによる決済に対応する可能性もゼロではない。
フェイスブックも!
米国で拡大する暗号資産決済
こうした暗号資産決済を導入する動きは“青天の霹靂”ではない。
ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)最大手のFacebook(フェイスブック)が「Libra(リブラ)」というブロックチェーン活用プロジェクトの開発を進めていることは、ブロックチェーン業界ではすでに周知の事実だ。
Libraについては未だ謎が多いが、日本の共通ポイントのように「1ポイント=1ドル」のような定額制の暗号資産となる可能性が高いと噂されている。暗号資産の根幹技術であるブロックチェーンを活用すれば、より透明性の高い広告プラットフォームを構築できると見られる。また、シームレスな国際間取引が実現されることによって、「SNSとeコマースの融合」が促進されるのではないか、とも予想されている。
フェイスブック傘下のSNS「Instagram(インスタグラム)」では、すでに多くの企業がインフルエンサーを起用したマーケティング・販促策を展開しており、ファッションや化粧品などの分野で大きな成果を上げている。仮に、Instagramに暗号資産による決済が導入されたとすると、国境を超えたシームレスな巨大ECモールが構築されることになる。
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暗号資産決済のメリットとは!?
暗号資産決済のメリットとは?
ではなぜ、暗号資産による決済がここまで注目されているのか。
その理由は多岐にわたるが、QRコード決済が拡大する日本市場では、その決済手数料の安さが魅力であるのは間違いないだろう。
一般的にクレジットカード決済では、1トランザクションあたり購入金額の2〜7%程度の手数料がかかると言われており、これが小規模店舗などへの導入障壁となっていた。また、現在普及が拡大しているQRコード決済においても、現在は無料としているサービスがあるものの、将来的な手数料は不透明なままだ。
その一方で、暗号資産決済の多くは1%以下の手数料で送金が可能であるため、採算ラインがシビアな小規模店舗にとって導入のハードルは低い。さらに、外国人旅行者の買物やeコマースにおいては、両替や国際送金などが不要で、対応クレジットカードなども気にすることなく世界中で取引(買物)することができる。また、決済時に銀行もクレジットカード会社も通さず、売上金がすぐに手元に届くという点も小規模店舗にとってはありがたい仕組みだ。
小売業界における暗号資産決済は、世界的大手主導による拡大フェーズに入ろうとしている。日本の小売業界にとっても、その動きは無視できないものとなってきた。