今あらためて「店舗運営のDX」を考える必要がある理由
お客の「選択肢」を増やすためのDXを
さて、DXが進むと同時に、消費者の購買行動もより多様化している。新聞購読率が下がりチラシが見られなくなっているのは周知の事実だが、ブラウザのGoogle検索からGoogleMapでの検索へシフトしたり、アマゾンをはじめとするECサイトではなくインスタグラムで買物をしたりと、とくに若年層を中心に加速度的に買物プロセス、そこで得る買物体験は変わってきている。
一方で業界にもよるが、日本のEC化率は依然低く、実店舗の購買が変わらず大きな割合を占める。だからといって、今までと同じような店舗運営で良いのか、というと違うはずである。
今日の消費者は、以前のようにテレビ広告などのマス媒体から得た情報によって「画一的な意思」を持つことは少ない。価値観が多様化するなかで、同じような価値観を持つ小さな集団に分散し、その集団で情報を集めていく。そうしたなかで、より品揃えが豊富で、好きな場所で好きな時に好きな物を買えるインターネット上の店舗のほうが、お客のニーズを満たすことができ、結果として最高の買物体験を享受できる。その点で、リアル店舗の価値が相対的に低下する恐れもなくはない。
つまり、いま小売業に必要なのは、お客に対して場所や買い方、価格などを「選んでもらえる」状態をつくること――つまり「選択肢を増やすためのDX」の実現である。そして、ただ選択肢を増やすだけでなく、いちばんの資産である「実店舗の価値」を生かしたうえで選択肢を増やし、「選ばれる店づくり」を果たすことが、「店舗運営のDX」のゴールであると筆者は考えている。
DXとは「現状の否定」ではなく「現状に則した改善」、もしくは「更新」である。いままで培ってきた経験や伝統をバージョンアップして、今日の消費者に支持され、喜んで買物してもらうために推進されるべきものである。
では、世界ではどのような店舗運営DXが推進されているのか。次回以降、深堀りしながらみていきたい。
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