米北東部で業績堅調なハナフォード 伝統的スーパーなのにお客に愛される理由とは

平山 幸江 (在米リテールストラテジスト)
Pocket

ストップ&ショップ(Stop&Shop)をはじめ傘下の伝統的なスーパーマーケット(SM)企業の不振により、アホールド・デレーズ(Ahold Delhaize)の米国事業の業績は低空飛行が続く。そのような中で手堅い成長を続けている企業がある。米北部5州で180店舗超を展開するハナフォード(Hannaford)だ。直近の売上高は42億ドルで、日本円にして約6300億円(1ドル=150円換算)。創業140年の歴史を持つ同社はなぜ、地域住民から根強い支持を獲得できているのだろうか。

青果店がルーツナチュラル志向に対応

 ハナフォードの創業は、米小売では最古に近い1883年。米国最北東部に位置するメイン州の港湾都市ポートランドで、アーサー・ハナフォード氏が小さな青果店を開業したのが始まりだ。

 その後、同氏の兄弟が経営に参加し、1920年にはニューイングランド地方北部ではトップクラスの規模の青果卸に成長。44年に小売店の1号店を開業した。その後、67年までに地場SM31店舗を買収したほか、1万9000㎡のディストリビューションセンターを設立。71年に年商100万ドル(1億5000万円)に達した。

 その後もハナフォードはメイン州内でSM企業の買収を続け、87年にニューヨーク州やマサチューセッツ州に進出、年商10億ドルまで拡大している。2000年になると、ベルギーを拠点とするデレーズ(現アホールド・デレーズ)の米国法人がハナフォードを買収。

 同じくデレーズ傘下のフードライオン(Food Lion)が米国の南東部、ハナフォードが北東部をカバーする布陣となった。

 ハナフォードはオーガニックやナチュラル志向といったトレンド拡大に早くから対応し、06年に米国農務省のガイドラインに基づいた栄養ガイド「ガイディングスターズ」を開始。また、集客力を高めるために店内ファーマシーの設置を進めており、現在150店舗以上に併設している。それゆえ平均店舗面積は4500㎡前後と大きい。

ハナフォード「アルバニー・センチュリーモール店」
ニューヨーク州にある「アルバニー・センチュリーモール店」。ファサードに青果のイラストがあしらわれており、伝統的SMのイメージが強い

新フォーマット開発 環境問題に積極投資

 環境問題に早期から取り組んできたのもハナフォードの特徴だ。09年に、メイン州内に出店した新店において、環境に優しい建築物を認証する「LEED認証」の最上位レベル「プラチナ」を獲得。SM業界では初めてのことで、以降の新店もすべてLEED認証を受けている。

 12年には、こちらもSMとしては初めて、全店舗で販売する魚介類がサステナブルであることを連邦政府に報告。13年には環境に優しい冷蔵システムを全米で初めて導入し、米国環境保護庁から「ベスト中のベスト賞」を受賞している。食品廃棄削減にも早くから取り組んでおり、16年に53店舗で廃棄ゼロを達成した。

 また、店舗フォーマット開発にも積極的で、2000年に売場面積3250㎡の小型店の展開を開始し、11年にはオンラインで購入した商品を店舗で受け取る「ハナフォード・トゥ・ゴー」をスタート。さらに16年には、ニューハンプシャー州に、カフェや非営利団体が無償で利用できるコミュニティスペースを併設した6300㎡の大型店を出店している。

 このように、業界に先立って環境問題に取り組み、オムニチャネルサービスや新フォーマット開発に積極投資してきたハナフォードだが、

続きを読むには…

この記事はDCSオンライン+会員限定です。
会員登録後、DCSオンライン+を契約いただくと読むことができます。

DCSオンライン+会員の方はログインしてから閲覧ください。

記事執筆者

平山 幸江 / 在米リテールストラテジスト

慶應義塾大学、ニューヨーク州立ファッション工科大学卒業。西武百貨店勤務後1993年より渡米。伊藤忠プロミネントUSA(Jクルージャパン)、フェリシモニューヨーク、イオンUSAリサーチ&アナリシスディレクターを経て2010年より独立。日系企業の米国小売事業コンサルテーションおよび米国小売業最新トレンドと近未来の小売業をテーマに、ダイヤモンド・リテイルメディア、日経MJ他に執筆、講演会多数。

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態