スプラウツ、自然派SMなのに売上1兆円越え、店数年間10%増の急成長戦略
スプラウツファーマーズマーケット(Sprouts Farmer’s Market、以下スプラウツ)は米国23州に435店舗を展開する大手自然派スーパーマーケット(SM)。戦略はまったく異なるがトレーダージョーズ(Trader Joe’s)にも似たカルト的ファンを持っているきわめて独自色の強いSMである。ファンド傘下に入ってから一気に業容を拡大、その先に見つめるものは何か?
自然派SMで売上1兆円突破!
アリゾナ州フェニックスに2002年、ボニー家が「ファーマーズマーケット」というコンセプトで創業したスプラウツは11年に投資会社アポロ・グローバル・マネジメントの傘下に入り、13年にナスダックに上場した。
筆者が09年にダラス店を視察した際はまだアリゾナ、カリフォルニア、テキサス州に40店弱を展開する家族経営のSM企業だったが新鮮な野菜、オーガニック食品、ナチュラル志向のサプリメントやボディケア製品を取り扱う小型SMとして、すでに米国小売業界で注目されていた。
アポロによる買収後はサンベルト(南部)地帯に店舗数を伸ばし、18年にフィラデルフィア出店で北東部に進出、19年にワシントンD.C.商圏のヴァージニア州、23年にニュージャージー州に出店し、23年3月時点で23州に419店を展開する。在庫型物流センター(DC)が6拠点あり、まもなく7拠点目が稼働する見通し。従業員数は約3万5000人だ。
23年度の売上高は68億3700万ドル(対前期比6.7%増)、1ドル150円換算だと1兆255億円に達する。自然派SMで1兆円を超えているのである。
事業モデル3つの特徴と積極出店
スプラウツのビジネスモデルとして3つの特徴をあげることができる。
①ウェルネスライフを支える商品アソートメントと量り売り販売
図表のように各カテゴリーにおいて、オーガニック、ビーガン、植物由来、グルテンフリー、GMO不使用など、ヘルシー志向の商品の割合が高い。棚札には「オーガニック」「ケトジェニック」(低糖質)などわかりやすく明示している。
店内中央に量り売りコーナーを広く取り、1)商品価格を最大約30%引き下げ、2)必要な量だけ買って食品廃棄を削減、3)一般的に販売されていない食品や高価な食品も取り扱い、4)包装材を減らしサステナブル、といったメリットを提供している。
②小型店舗でファーマーズマーケットの体験を提供
店舗面積は平均2970㎡で、準郊外のネイバーフッドショッピングンセンター(SC)やSC再開発物件の新たなアンカーとして店舗数を増やしてきた。小型店舗は低コストなため小商圏でも出店しやすい一方で、他社が拡大しているデリは最小限だ。
代わりにスプラウツでは圧倒的な強みとする青果、他社に類を見ない幅広い品揃えの量り売り、充実したウェルネス系グロサリーとヘルス&ビューティ(HBC)を集客装置としている。
③Z世代、ミレニアル世代の都市型ライフスタイルをターゲット
Z世代は必ずしも高所得ではないが、フィットネスが生活の一部となっており、多少高くてもスーパーフードやサプリ、機能性食品を好んで購入する傾向がある。利便性も重視されるので小型店は好まれ、インスタカート(Instacart)と提携しネットスーパーにも力を入れている。
23年5月にはインスタカートのリテールメディア支援サービス「キャロットアド」と契約して広告キャンペーンの最適化も始めている。
そうしたなか
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