ヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)は、子会社フーコット(同/新井紀明社長)を通じて、ディスカウント型スーパーマーケット(SM)「フーコット」の1号店「フーコット飯能店」を埼玉県飯能市に8月3日オープンした。売場づくりや商品づくり、フーコットの狙いは?オープン当日朝、同店に足を運んだ。文中の価格表記はすべて税抜き。
待望!フーコット1号店がオープン
フーコット1号店である「フーコット飯能店」がオープンしたのは圏央道「狭山日高インター」から車で10分程度の距離にある近隣型ショッピングセンター(NSC)内、退店した「スーパーアルプス飯能新光店」跡地への居抜き出店である。ヤオコーではフーコット飯能店を居抜き出店に伴うイレギュラーな店舗と位置付けているようだが、フーコットの基本的な方向性と商品政策を窺い知るには十分であろう。
NSCは東飯能駅から車で約6分ほど(2km程度)の距離にあり、近隣にはベルク飯能緑町店やビッグエー飯能緑店などがある。
NSCは460台の駐車場を備え、マツモトキヨシ、ダイソー、西松屋という強いテナントが揃っている。
フーコット飯能店の営業時間は午前10時から午後7時。筆者は午前10時前に現地に到着したものの、混雑により駐車場に入るまで10分ほど時間を要した。平面駐車場はすでにいっぱいで、屋上駐車場に入庫。車のナンバーを確認したところ、ほとんどが所沢ナンバーだったが、仙台ナンバーや八王子ナンバーも見かけた。そのため、店内でも店外でも小売業界人らしい人を見かけた。
なお店舗にはすぐには入店できなかった。というのも50mほどの行列ができていたからだ。目算でざっと150人ほど並んでいただろう。炎天下の中、日陰もないところに並ぶのかと思ったが、7〜8分ほどでスムーズに入店。「コロナ対策で、5分おきに入店していただきます」「カートが不足しているので、カゴだけで良い方は先に入店していただけます」と適宜お客にアナウンスしており、混乱もなく、手慣れたオープニング運営であった。
フーコット飯能店のレイアウト、売場づくりの特徴は?
売場づくりは「エイビイ」(ヤオコー子会社のエイヴイが展開するディスカウント型SM)のスタイルをベースとしている。
売場は青果から始まり、平台の高さを100cmくらいに抑え、見通しやすく、各平台に置くSKU数も絞って打ち出しがはっきりしている。平台の幅も4~5m程度に抑え、お客が買い回りしやすい売場設計。
コンコースは青果に続いて、鮮魚、精肉、総菜と流れていき、購買頻度が生鮮並みに高い和洋日配と加工肉、そして酒類へとつなげるレイアウトだ。
鮮魚〜総菜へ至るコンコースは、壁面と反対側(定番ゴンドラ側)にキャスター付き平台の大量陳列コーナーを二重に配置。お買い得品を販売するほか、たまごやこんにゃくなどの定番売場となっている。店舗で配布しているレイアウトではこのコンコースは青果と大差ない幅に見えるが、実際は倍くらいの幅がある。鮮魚と精肉売場の間ぐらいでワンウェイコントロールが終わるが、そのまま大部分が精肉売場へと進み、一部が特売の平台コーナーに誘導されていた。
また、総菜の先にある日配売場も、間に通路がなくワンウェイコントロールで酒売場へと誘う作りになっている。
次に特徴的な売場をピックアップしてみる。
青果の平台本数は8本で、旬のフルーツから野菜へと流れるオーソドックスな展開。売場トップは1玉980円のすいか(Mサイズ)、桃4個入り399円、壁面トップのバナナ(フィリピン産)は1房59円の激安価格でお客を引っ張っていた。野菜ではきゅうり1本19円、レタス1玉79円、とうもろこしとブロッコリーは各99円と主な野菜は2ケタ売価で、強烈な安さをお客にアピール。後方の平台でキャベツ(1玉79円)をうずたかく積み上げていたが、ベースの平台が低いので、売場で目立つ効果的な陳列であった。
鮮魚精肉はプロセスセンターから納品
鮮魚、精肉売場のポイントは、対面売場はなく、フーコット本社に併設された「フーコット小川生鮮センター」から納品された商品がベースになっている点だ。鮮魚売場では「センター加工品のため、調理加工は受け付けない」旨の張り紙をしていた。100g /59円のまいわしや2尾/499円のいさきなどが丸のままトレイに入れられ陳列されている。オープン特価で、1パック399円の中国産原料使用のうなぎ長蒲焼にお客が集まっていた。
総菜売場は、インストアとアウトパックの組み合わせ。和総菜や麺類はグローバルフーズ、生寿司はインストアだが、助六や巻物はミツハシ春日部工場だった。インストアの弁当は298円ながら、唐揚げ弁当は唐揚げが4つ入り、鮭西京焼き海苔弁当は大きな切り身の鮭が入って、それぞれ299円という他店ではなかなかない価格だった。
ちなみに同店ではヤオコーのプライベートブランド(PB)は取り扱わず、ワインでも調べた限りではヤオコー子会社・小川貿易の商品は見当たらなかった。
全体的には、エイビイをベースにしたディスカウント型SMでありながら、標準化を強く意識した、多店舗展開のためのフォーマットであるという印象を受けた。一方でグロサリー売場では、商品のアイテム数が極端に絞り込まれてはおらず、ディスカウントタイプの店でありながら、食品スーパー(SM)並みの品揃えも提供しようという意図が見える。例えばドレッシングコーナーは中〜上段の単品あたりフェース数は3〜5といったところで、品揃えが豊富な印象を受けた。
すでにフーコットは2号店のオープンを予定している。全くの新店となるこの2号店でどのような売場づくりが見られるかに注目だ。