紀ノ國屋(東京都/堤口貴子社長)は12月8日、東京都練馬区の商業施設「光が丘IMA(以下:IMA)」内に「Daily table KINOKUNIYA 光が丘IMA店(以下:光が丘IMA店)」をオープンした。主に駅近の商業施設内にコンパクトな面積で展開する「Daily table」業態としては、8店舗目の出店となる。 ※文中の価格はいずれも税抜
生鮮を扱わない「グロサリーショップ」として展開
光が丘IMA店は、同日にリニューアルオープンしたIMA中央館の地下一階、食品売場の一角にある。最寄りは都営地下鉄大江戸線「光が丘」駅で、駅からIMAへは地下通路でつながっており雨に濡れずに移動可能だ。こうした立地特性から、メーンの顧客層には駅の利用客と近隣のマンション居住者を設定している。
約253㎡とコンパクトな売場では、高級スーパーマーケット(SM)として通常のSMとは一線を画す紀ノ國屋ならではの商品を取り扱う。既存店でとくに人気の高いプライベートブランド(PB)商品や、全国各地から取り寄せたこだわりの商品など他店にはないラインアップが特徴だ。ただし、光が丘IMA店では生鮮食品の取り扱いはない。同フロアに青果店・鮮魚店・精肉店が各2店舗ずつ出店しており、フロア全体での買い回りを意識した施設側の要望によるもの。食品売場の中で、「グロサリーショップ」としての立ち位置を打ち出す方針だ。
紀ノ國屋ならではの商品ラインアップ
商品政策を詳しく見ていくと、光が丘IMA店では「PBの品揃えを意識した商品展開をしている」(紀ノ國屋販売推進課リーダー 河奥雅子氏)。とくに、不動の人気を誇るという卵かけご飯専用醤油「贅沢な卵かけトリュフしょうゆ」(1000円)や、紀ノ國屋のベストセラーになった「いちごバター」(630円)、「福岡県産あまおういちごバター」(1100円)などは、店外の通行客からよく見えるようボリューム陳列。菓子類でも人気のPBを取り揃えた。
また、住宅地を抱える駅近という立地からは即食・簡便系の商品需要が高いと見込まれる。総菜類の取り扱いはないものの、需要をカバーするために冷凍食品のラインアップを充実させた。PBを含めた複数ブランドの商品を展開、比較的手頃な価格帯の商品から、PBの「中華丼の具 フカヒレ入りプレミアム」「牛丼の具 国産黒毛和牛使用」(いずれも1100円)など付加価値を高めた高価格帯の商品まで取り扱う。
ほか、光が丘IMA店では味噌の品揃えに注力。PBの無添加味噌をはじめ、全国各地から取り寄せた味噌が種類豊富に並ぶ。「(味噌は)日本人の生活に欠かせないもの。いつも使っているものとは違うものを試してもらうきっかけになれば」(河奥氏)。
これらはいずれも紀ノ國屋以外では手に入りにくいものばかり。“ちょっといいもの”を求める顧客のニーズに応え、定期的に足を運んでもらうきっかけとしたい考えだ。
オーガニック製品、ワイン売場での工夫
近年の健康意識の高まりを受け、需要が増えつつあるオーガニックやマクロビオティック商品は、共用通路に面した場所に専用コーナーを設置した。自然食品や無添加食品の開発・販売を行うムソー(大阪府/出口裕起社長)の商品を中心に、オーガニックの調味料、飲料、レトルト食品などが並ぶ。
また、酒類は冷蔵・常温合わせて606SKUと、同店の中では加工食品(2300SKU)に次ぐ品揃え。世界各地のビールや選りすぐりの日本酒などを扱う中、とくに販売に力を入れているのがワインだ。日常使い向けのコストパフォーマンスを重視したワインを2本よりどり1980円、週末や来客向けのワインを2本よりどり2980円(税抜)で販売、手に取りやすい価格と選ぶ楽しみを訴求する。
このほか、ワイン売場からレジへの導線上に、ナッツやジャーキー、チーズサラミなどをPBを中心に陳列。ワインを購入したお客のあわせ買いを促し客単価を引き上げるねらいだ。
出店戦略に変化
ここのところ紀ノ國屋では「Daily table」業態の出店が続くが、「コロナで先行きが不透明な中、路面店を出すのはなかなか難しい。(Daily tableの)業績が好調なことも要因のひとつ」と河奥氏。
また、従来Daily tableはJR中央線沿線での出店が多かったが、今回はJRの乗り入れのない練馬区での出店となった。きっかけは関西初出店となった「紀ノ国屋ジェイアール京都伊勢丹店」(京都府京都市:20年4月オープン)で、「京都への出店をきっかけに東京以外のエリアでも、さまざまな商業施設から声をかけて頂くようになった。これからはJR沿線・東京以外にも積極的に出店を検討していきたい」とも河奥氏は話した。