最新店から徹底考察! 京都の知られざるローカルスーパー「新鮮激安市場!」の凄み

2025/07/08 10:20
森本 守人 (サテライトスコープ代表)

コスモコーポレーション(京都府/堀井徳人社長)は2025年5月23日、京都府京都市に「新鮮激安市場!太秦(うずまさ)店」(以下、太秦店)をオープンした。売場面積約200坪とコンパクトな規模でありながら、生鮮強化に徹する独自の店づくりをレポートする。

生鮮品を強化したSMフォーマット「新鮮激安市場!」

 コスモコーポレーションは京都府に本社を置き、府内で店舗展開する食品スーパー企業だ。祖業である鮮魚店の設立は1990年に遡る。かつては価格訴求型スーパーを志向し、熾烈な価格競争の中で不振に陥った時期もあったが、生鮮食品を強化する商品政策に切り替えて以降、躍進を続けている。255月期の売上高は188億円(対前期比1.6%増)で、24期連続の増収を果たした。

 同社が運営する全15店舗(太秦店を含む)のうち、食品スーパー「新鮮激安市場!」は13店舗。主力と言えるこのフォーマットは京都府内で店舗網を拡大し、とくにファミリー層や若年層が流入する人口密集エリアへの出店を進めている。

 最新店の太秦店は京都市右京区の京福電鉄嵐山本線「太秦広隆寺」駅から直線距離で南に500mほどの場所、約180戸が入居するマンション(建設中)と同じ開発エリア内にある商業ゾーンに開業した。店舗の西側には「京都府道132号太秦上桂線」が南北に走り、クルマでのアクセスが良好な環境にある。

 半径500m圏内に1万人弱、同1km圏には約4万人が居住しており、3040代のファミリー層の流入が目立つエリアだ。同社既存店の中でも、商圏の人口の多さは上位に位置付けられる。

 主たる商圏とする半径500m圏内の競合店は、道路をはさんだ真向かいにある「スーパーフレスコ太秦店」だ。コスモコーポレーションの堀井社長は「さらに1km圏まで広げると複数の有力スーパーが点在するが、当社が得意とする店づくりを行えば近隣のお客さまにご利用いただけると判断した」と説明する。

 同店の売場面積は207坪。売場面積140150坪が多い「新鮮激安市場!」としてはやや大きいが、一般的なスーパーと比較するとコンパクトだ。

オープン初日で売上高1000万円達成

 売場は青果、鮮魚、精肉の生鮮3部門で味、品質、鮮度を訴求する商品を充実させる方針を掲げる。一方、加工食品、日配など、購買頻度の高い商品は毎日低価格を訴求するEDLP(エブリデー・ロープライス)戦略で集客を図る。

 そうした販売施策をベースに、「新鮮激安市場!」が店舗コンセプトに掲げるのは、「昔ながらの市場・商店街」。鮮度、おいしさに加え、「活気」に満ちあふれた売場づくりを志向しているという。では、実際どのような品揃え、売場づくりで集客しているのか。太秦店の開業初日の様子をレポートする。

 青果は、入口すぐの風除室で野菜、果物のお買い得商品を陳列する。取材時は「きゅうり」(498円:以下税抜)、「ミネオラオレンジ」( 1298円)などが並び、来店したお客のほとんどが最初に同コーナーに立ち寄っていた。店内では、トップラインに産地を厳選したオレンジ、リンゴ、マンゴーといった果物を配置し、アボカドなどの野菜とともにカラーコントロールに配慮した見栄えのよい売場をつくっていた。

産地を厳選したオレンジやリンゴ、マンゴーといった果物でカラーコントロールに配慮した売場をつくっていた
「京都の地場野菜」と題し、京都産の青果を販売

 鮮魚は新鮮激安市場の看板部門だ。10数種類の丸魚を揃えるほか、切り身、柵などを幅広く展開するなど、豊富なSKU数を確保。対面接客の売場をつくることで活気ある雰囲気を演出する。

鮮魚店が前身のコスモコーポレーションにとって、鮮魚は看板部門だ

 さらに、即食商品にも力を入れている。店内加工の新鮮な生ネタの刺身と寿司を主通路に近い大型の冷蔵ケースで展開するほか、「はも照焼」(780円)、「ホッケ塩焼き」(498円)といった魚総菜も充実させていた。

鮮魚部門では生ネタを使用したこだわりの寿司も豊富に扱う。写真は「本鮪こだわり10貫」(1800円)

 総菜は、主通路沿いに配した大型平台で、インストア加工の弁当、丼、おにぎりといった米飯類のほか、揚げ物などを揃える。取材時は「とんかつ弁当」(398円)、「焼きさばのっけ丼」(598円)、「衣笠丼」(398円)などが並んでいた。

主通路沿いの大型平台で、米飯類のほか、揚げ物などを揃える

 精肉は、牛肉で黒毛和牛、国産、輸入をバランスよくラインアップし、幅広い選択肢を提供。また「ステーキ用」「しゃぶしゃぶ用」「焼肉用」など、メニューに応じた商品展開も行っていた。鶏肉では「骨付もも肉」「たまひも」といった、一般的なスーパーでなかなか見られない商品も並ぶ。

牛肉は「ステーキ用」「しゃぶしゃぶ用」「焼肉用」などメニューに応じた商品展開を行う
鶏肉では「骨付もも肉」はじめ珍しい形態や部位の商品もラインアップする

 日配品は、大型の冷蔵平台で各種ナチュラルチーズ、キャビアなど付加価値商品を揃え、競合との差別化を図る。

大型の冷蔵平台で展開するナチュラルチーズ

 また、コンパクトな売場ながら、冷凍食品のスペースは広く確保していた。

 そのほか、店舗周辺がファミリー層の流入しているエリアであるため、2階は子供の遊び場もあるイートインスペースを配置している。

 以上の取り組みにより、太秦店ではオープン初日に売上高1000万円を達成。その後も予算を大きく超える水準で推移し、好調なスタートを切っているようだ。年商目標も当初14億円としていたところ、想定以上の売れ行きとなったため、16億円へと上方修正している。

 「新鮮激安市場!」が京都府内で今後さらに存在感を高めていくのか、目が離せない。

 

店舗概要】

オープン日 2025523

所在地   京都市右京区太秦荒木町8-9

店長    播磨朋美

営業時間  9:0020:00

売場面積  207坪(直営ベーカリーショップ含む)

駐車台数  47

記事執筆者

森本 守人 / サテライトスコープ代表

 京都市出身。大手食品メーカーの営業マンとして社会人デビューを果たした後、パン職人、ミュージシャン、会社役員などを経てフリーの文筆家となる。「競争力を生む戦略、組織」をテーマに、流通、製造など、おもにビジネス分野を取材。文筆業以外では政府公認カメラマンとしてゴルバチョフ氏を撮影する。サテライトスコープ代表。「当コーナーは、京都の魅力を体験型レポートで発信します」。

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