ヤオコー久喜菖蒲店が示す「スーパーマーケットの旗艦店」があるべき姿
ヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)は3月22日、埼玉県久喜市に新たな旗艦店「ヤオコー久喜菖蒲店」をオープンした。これまで苦手としてきたヤングファミリー層の獲得を重点課題に掲げ、旗艦店として最新の商品政策(MD)を導入。それと同時に、旗艦店が持つべき本来の役割や意義を再考した店づくりに取り組んでいるのも特徴だ。
水平展開を大前提とした
“現実的”なMDを導入
久喜菖蒲店は、JR宇都宮線・東武伊勢崎線「久喜」駅から西へ約6km、自社開発の近隣型ショッピングセンター(NSC)「the market Place 久喜菖蒲」の核店舗として開業した。商圏人口は希薄で、半径3km圏内には7100世帯/2万1000人、同7km圏内でも9400世帯/2万2800人にとどまる。
しかし、店舗から目と鼻の先の場所に「モラージュ菖蒲」と「フォレオ菖蒲」の2つの大型商業施設があり、それぞれに「ヨークマート」と「ロピア」が出店。いずれも週末を中心に多くのお客で賑わう繁盛店となっており、競争環境は厳しい。
そうしたなかで久喜菖蒲店は、12年開業の旗艦店「川越的場店」(埼玉県川越市)で掲げた「生鮮強化」「価格コンシャス強化」のコンセプトをさらに進化させた新たな旗艦店として開発された。「われわれがやや苦手としてきたヤングファミリー層からの支持を獲得していく」(川野社長)ことを重点課題に掲げ、マミーマートやロピアを訪れる若い家族連れの取り込みをねらう。
商品政策(MD)については、旗艦店ならではのチャレンジブルな“尖ったMD”ではなく、既存店への水平展開が可能であることを前提にした“現実的なMD”を導入しているのが特徴的だ。これは、「これまで旗艦店で取り入れたMDは、売場スペースやオペレーションなどの問題で既存店ではなかなか導入できないケースが少なくなかった」(ヤオコー販売第二部長の板倉勇二氏)という反省の上に立ったもの。そのため久喜菖蒲店では、成功した試みをしっかりと既存店に波及させ店舗全体のレベルを底上げするという、旗艦店が持つべき本来の役割にフォーカスしたMDとなっている。
ミールキットを自社開発
運営手法にも一工夫
売場は「生鮮分離型」のレイアウトとなっており、メーン入口から順に青果→鮮魚→精肉→総菜・ベーカリーと続くオーソドックスな構成だ。「生鮮強化」を掲げるだけに素材の販売にはもちろん力を入れると同時に、ミールキットやレンジアップ商品など簡便商材についても、自社開発の商品を中心に品揃えを強化している。
このうちミールキットは、鮮魚売場では「XOジャン香るイカとキャベツの中華炒め」「ゆず香る白身魚の甘酢あんかけ」(各2人前/980円[以下すべて本体価格])、精肉売場では「チンジャオロース風炒め」「鶏肉と野菜の黒酢あんかけ炒め」(各698円)などを販売。このほか、フライパンや鍋などで加熱するだけで出来上がる簡便商品として「イカ墨の本格パエリア」(980円)、「ホタテのネギ塩焼き」「白身魚のバジルソテー」(各498円)、精肉では「香味どり使用のチキンチャウダー」「牛肉ユッケジャンスープ」(各500円)などバラエティ豊かな商品を展開している。
一方、効率的な店舗運営を行うため、オペレーション面ではさまざまな工夫をしている。
まず大きな特徴として挙げられるのが営業時間で、商圏特性として18時以降の買物需要が少なくなるため、閉店時刻を通常の店舗よりも1~2時間ほど早い20時とした。さらに、週末に来店が集中することから、平日は限られた人数で運営できるオペレーションを構築するため朝7~9時の2時間のシフトで品出しのみを行う従業員を約30名確保。日配品とグロサリーを中心に、開店前に集中的に品出しを行うことで、開店以降の時間帯は接客や調理などに専念できるような体制を整えた。
加えて総菜部門では売場と調理スペースの間にガラス戸を設置。一部の商品については調理場から直接品出しできるようにした。
ヤオコーの新たな旗艦店としてオープンした久喜菖蒲店。売場を一見しただけでは、旗艦店ならではの“斬新さ”を感じるポイントはそれほど多くはない。しかし、ヤングファミリー層の取り込みや旗艦店MDの水平展開の難しさなど、積年の課題を解決するための戦略的に重要な店舗であることは間違いない。「この店の成否が来期を占うことになる」――。川野社長の言葉に、その本気ぶりが伺える。
店舗概要
住所 | 埼玉県久喜市菖蒲町菖蒲7001 |
電話 | 0480-85-8711 |
アクセス | JR宇都宮線・東武伊勢崎線「久喜」駅よりバスで18分 |
オープン日 | 2019年3月22日 |
営業時間 | 9:00〜20:00 |
売場面積 | 2577㎡ |
駐車台数 | 202台 |
アイテム数 | 1万6700SKU |