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ローカルスーパーが「青果」で差別化を図る方法とは

構成:西岡 克(フリーランスライター)
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全国各地で競争が激化するなか、苦境に立たされるローカルスーパーも目立つ。しかしその要因には有力チェーンを模倣して終わるという、自店のお客を無視した安直な売場づくりも背景にあると筆者は考える。ローカルスーパーはいかに強みを磨き、生き残っていくべきか。青果部門を軸にその方策を考えてみよう。

52週MDの盲目的信仰

 ローカルSMはパパママストアを原型とし、そこから200~300坪のセルフサービスの食品スーパー(SM)に進化していった。総合スーパーなどの全国チェーンが地方都市に進出した後も、戦いを生き残ったのが現在のローカルSMである。

 しかし、最近はロピア(神奈川県/髙木勇輔代表)のような圧倒的集客力を有する新勢力が地方部でも台頭。ローカルSMにとっては、これまで以上の強敵となっている。

 今までローカルSMは販促テーマである「52週マーチャンダイジング(MD)」を販売計画と勘違いし、呪文のように唱えてきたが、実現できているSMを見たことがない。実現するためにはレベルの高い現場力が必要だ。それを理解せずに実行しようとしても、売場が混乱するだけでお客にとって買いにくい売場になってしまう。

 しかし実際、食事と直接関係のないテーマ(七夕、ハロウィンなど)を設定し、週ごとの重点商品を事前に決めて販促を強化するだけの、店都合による“お客不在のMD”が散見される。こうした52週MDの“盲目的信仰”が、ローカルSMの体力をどんどん奪っていったと筆者は考える(販売計画の目的は別の回で詳細に述べる)。

「弱み」ではなく「強み」に目を向ける

 そこで、ローカルSMは何とかしなければと、首都圏に市場調査(MR)へやってくる。

 調査の前提として必要なのは、たとえば立地や店舗構成、青果であれば鮮度や品揃え、価格など「自社は競合と比べて何が強いのか、弱いのか」を客観的に分析することだ。そのうえで「強い点をさらに強くするために何をすべきか」と、部門ごとに対策案を立ててからMRするのならいいが、戦略もなく店を見に来て“評論家”になっている人が非常に多い。

 また、ローカルSMの多くは自社の「弱み」ばかりに目を向けがちだ。しかし弱みを一から改善して強みにすることは簡単なことではない。今の強みをさらに強くするほうが負荷も少なく、競合にとって脅威になりやすい。お客の目的来店性もより向上するだろう。だから、自社の強みをいかに磨き込むかを優先的に考えるべきなのだ。

 客観的な分析と対策を固め、具体的な実行計画を立案できれば、自店のMDは自然と磨かれてくるはずだ。ただし、それを阻害するのが過去の強烈な成功体験である。とくにローカルSMの場合、地域で生き残ってきただけの仕入れや販売面での大きな成功体験がある。販売計画が立案できていないため、そこからどうしても脱却できないのだ。自社MDがMRにより「他社MD化」し、自店のお客のニーズととのギャップがどんどん広がっていくのだ。

首都圏チェーンの「TTP」に効果なし

 ローカルSMは首都圏の有力チェーンを見て、「TTP(徹底的にぱくる)」に精を出す。とくに企業の上層部ほどTTPに熱心だ。なぜなら、いちばん簡単な方法だから。

 私がSMに勤務していた頃、あるSMが新店に「ヤオコー」のMDを導入しようと、3日間かけて、全バイヤーが全棚割りと品目数をメモして帰ったという話を聞いた。それでその店が売れたのかと尋ねると、売れなかったという。自社のお客を見ずに他の繁盛店のMDで売場をつくっても、魅力は出せないという典型的な事例だ。

 ヤオコーが始めた「クッキングサポートコーナー」や「地元野菜コーナー」も、今や多くのSMが導入している。しかし大きく成功していると言えるSMを見たことがない。

 うまくいかない理由は、

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