マツキヨココカラ&カンパニー(東京都:以下、マツキヨココカラ)はこの春、立て続けに開発メーカー名を全面に打ち出した化粧品の新プライベートブランド(PB)を投入する。3月発売の「nake(ネイク)」と4月発売予定の「KNOWLEDGE(ナレッジ)」だ。
3タイプのPB約1900SKUを展開
化粧品新PB「nake」「KNOWLEDGE」はいずれもマツキヨココカラの1億4000万人を超える顧客接点の購買データから得られた知見や分析結果と、その分野での研究開発力に長い歴史をもつ化粧品メーカーとのタッグにより生まれたものだ。
同社のPBには、コンセプトにより3タイプがある。
主力ブランドの「matsukiyo」、美と健康をサポートする専門家が推奨するヘルスケア商品を取り扱う「matsukiyoLAB」、高品質・高付加価値にこだわった、特定のカテゴリーに特化して開発した「独立型ブランド」で、現在、3タイプ合わせた商品数は約1900SKUに上る。
主力の「matsukiyo」はマツキヨココカラらしさを打ち出し、極力、メーカー色を出さないのに対し、独立型ブランドはメーカー名を全面に打ち出して新たに提案する世界観を伝えていくもの。今回の「nake」「KNOWLEDGE」は、オーガニックコスメブランド「ARGELAN(アルジェラン)」、エイジングケア世代をターゲットにした基礎化粧品ブランド「Retinotime(レチノタイム)」、敏感肌向けのスキンケアシリーズ「RECiPEO(レシピオ)」などと同じ独立型ブランドとなる。
「スキンケア以上、メイク未満」がコンセプトの「nake」
「nake」は、江戸時代後期に創業した紅屋を祖業とし、メイクアップやスキンケア製品を手がける化粧品メーカー・伊勢半(東京都)と共同開発した。「スキンケア以上、メイク未満」をコンセプトとしている。
MCCマネジメント(東京都)で「nake」の開発を担当した商品開発部 商品開発課主事の和田邦美氏は、「コロナ禍を経て、すっぴん風メイク(ナチュラルメイク)がますますトレンドになっている。しかし、nakeはそこを狙ったものではない。すっぴん風メイクを実現するための、理想のすっぴん状態をつくり上げることに特化した」と話す。
同社が実施した意識調査(週3日以上メイクをしている15~39歳の女性400人対象の「すっぴんとメイクに関する調査」)によると、「すっぴん風メイクをめざしても、なかなか理想のメイクになっていない」という人が半数以上いることがわかった。和田氏は、その要因に“現実のすっぴん”とあるべき“理想のすっぴん”とのギャップがあると考え、「その間をうめる提案をすることで、理想のすっぴんメイクが実現しやすくなるのではないか」ということから「nake」の開発を進めたという。
「シミやクマ、毛穴など気になる箇所だけを修正し、理想のすっぴん状態をつくりあげる」。
このプロセスを「ととのえメイク」とネーミングし、洗顔→スキンケア→ととのえメイク→メイクという新しいプロセスの確立により、理想のすっぴん風メイクをより身近なものにできると考えた。
これらを実現するため、「nake」には「ニキビのもとになりにくい処方」「低刺激性」「洗顔料で簡単OFF」「使う人を選ばないナチュラルな仕上がり(男性が使用した際にもすっぴんの風合いを損なわない)」「簡単に使える商品設計」といった特徴がある。
また、「nake」が想定する対象は、理想のすっぴんメイクを実現したいという層だけではない。先ほどの調査によると、7割近くが「理想的とするすっぴんが実現できたら、その状態で外出できると感じている」と回答している。「nake」はそうしたニーズにも応えることができる。
さらに、マツキヨココカラの執行役員 グループ営業企画統括 営業戦略室 商品戦略専任部長の山内太郎氏は次のように話す。
「リモートワークやオンラインなど、新しい働き方が定着したなか、男性にも、身だしなみのひとつとして、また自己表現のツールとしてスキンケア、メイク商品を使う層が確実に増えている。この機が熟したタイミングに合わせて、nakeを当社初のジェンダーレスなコスメブランドとして打ち出していく」。
実際の開発にあたった伊勢半の営業本部営業戦略部の岡あづさ氏は、「当社として、これまでジェンダーレスを意識して開発したことはない。そこで今回は、メイクをしたいが、メイクしたことがわからない、他人から気づかれにくい風合いのもの用意した」と語っている。
こうした層にも対応するべく、「nake」では「性、年齢で区切るのではなく、すっぴんに満足できていないすべての層をターゲットとした」(和田氏)。
「nake」はプライマー2種、コンシーラー、フェイスパウダー、アイブロウペンシル2色、アイブロウマスカラ2色、リップバーム2色の全10商品を展開。これらを通じ、マツキヨココカラでは、いままでのメイクの概念や、メイク市場にはない新しいカテゴリーを創造したブランドの確立をめざしている。
「KNOWLEDGE」はマンダムと共同開発
一方の「KNOWLEDGE」はマンダムとの共同開発だ。4月1日より、男性の肌特性に着目したスキンケア5品、ヘアケア6品のトータル11品のラインアップで展開する。
マツキヨココカラ専務取締役の松本貴志氏は開発のねらいについて、「男性肌や頭皮の研究や皮膚浸透の先端技術、男性化粧品におけるリーディングカンパニーであるマンダムさまといっしょに、KNOWLEDGEをきっかけに男性の美容行動を習慣化し、男性が美しくなる、未来の常識をつくっていきたいと考えた」と語る。
「KNOWLEDGE」は「ずっとチャレンジしたいと考えていた待望の男性用化粧品のブランド」(開発を担当したMCCマネジメント 商品開発部 商品開発課主事の早川龍二氏)という。
コロナ禍ではスキンケアが男性化粧品市場をけん引。日常に戻ったいまも、男性からのスキンケアに対する意識は高い。しかし「SNS中心にスキンケア情報があふれているなか、自分に合ったものがわからない、何を使ったらいいのかわからない、という悩みがある」(早川氏)。
そこで、男性にとっての正しいスキンケアの知識を積み上げ、学び、自らの答えとなってくれるようなものをめざして「KNOWLEDGE」と名付けた。グループ全店での実績から、ヘアケア・フェイスケアへの投資額、投資比率ともに高い25~39歳の男性をメーンターゲットとして設定した。
男性の肌には、女性と比べて「皮脂量が多い」「水分量が少ない」「部位差が大きい」といった特徴がある。そのため表皮のバリア機能が低下し、うるおいが逃げ、肌荒れを起こしやすい。
「KNOWLEDGE」では、マンダム独自の最先端の浸透技術「セラミドバイセル」を搭載した商品設計とした。この「セラミドバイセル」は美容保湿成分をたっぷり抱え込んだナノサイズ(毛穴の約1万分の1)の超微細なカプセル。「角層奥まで浸透し、このカプセルが通ることでうるおいの通り道ができ、後から使うスキンケアの肌なじみもよくなる」(マンダム ブランドマーケティング一部・市川雄一氏)という。
「nake」と「KNOWLEDGE」の発表の場で、マツキヨココカラの広報担当者はこう口にした。
「(独立型ブランドの開発は)チャレンジングな取り組みだが、われわれはここにこだわり続けていく」
マツキヨココカラの化粧品カテゴリーの売上はドラッグストア業界トップ。同カテゴリーの粗利益率も大手DgSの中でトップだ。「nake」や「KNOWLEDGE」にも見られるこだわりは、同社の化粧品カテゴリーにおける強さの象徴でもある。