輸入品との価格差縮小で商機も!「コスパ競争」に移行するインフレ時代の価格戦略
有名ブランドと自社商品を比べて欲しいイオンリカー
コスパのアピールには、比較対象を設定するのも分かりやすい方法です。イオンリカーが3月3日に開設した市ヶ谷店(東京都千代田区)は、路面店における都心モデルで、とにかく「酒類LOVER」の嗜好に特化したといいます。
同社のワイン売場は通常、グループのコルドンヴェールによる輸入ワインを中心に構成しますが、今回はワインLOVERに名の知れたブランドを集めました。中心価格帯は、従来の路面店が1500円前後のところを、2000~3000円台に設定したそうです。ウイスキーも同様で、世界中から知る人ぞ知るブランドの調達に努めるといいます。
しかし直輸入のワインやウイスキーの販売を諦めたわけではありません。とはいえ、未出店エリアで認知のない自社ブランドを大量陳列したところで、酒類LOVERが手に取ってくれるわけでもありません。そこで、酒類LOVERに知られたブランドと、産地や特徴などで相対する自社商品とを比較するPOPを用いて提案しています。
このPOPで重要なのは、価格の安さを強調していないことです。値段の差など、酒類L LOVERはさして問題にしません。相対する2つの商品を比べたうえで、その品質に納得してもらう。それができてこそ、コスパを認められます。
イオンがコスパで奨める国産&無凍結タコ
コスパは、相対するものより安いときだけ高まるわけではありません。イオンリテールが3月10日から関東・山梨で販売を開始した水ダコは、輸入ダコとの価格差の縮小に商機を見出した仕掛けです。
産地におけるタコの不漁や円安その他のコストアップ要因で、モーリタニア産のマダコは相場が上がりました。国産との価格差が縮まったこのタイミングで、北海道・青森・岩手で水揚げされた水ダコを、宮城県石巻市の加工場を経由して商品化する新たな調達ルートを構築しました。
この水ダコ、訴求ポイントは「国産」であることに加え、水揚げから店頭まで「無凍結」の素材を加工している点です。商品名に「水揚げから一度も冷凍していない」と冠し、「蒸しだこ」と「炙り焼きだこ」の2品を商品化しました。グラム単価ではなお輸入品よりも高価ですが、国産&無凍結の付加価値も相まってコスパを訴える商品です。
価格を下げるためのコスト削減というと、もはや骨身を削るほど過酷な減量のようで重苦しい感じがします。しかしコスパを高める競争にはいろいろな視点やアプローチがあり、創造性があります。23年の食品市場の打開策として、さまざまな工夫が出てくるはずです。