巣ごもり需要で始まった「おうちお好み焼きブーム」は物価高で止まったのか
10月の輸入小麦の政府売渡価格は据え置きも他要因で値上げのミックス粉
家庭でも簡単で便利にお好み焼きが作れるのは、小麦粉に調味料などが加えられたお好み焼き用の「ミックス粉」の存在が大きい。
その主原料である小麦粉は9割を北米などからの輸入に頼っている。
小麦粉の国際価格は、脱コロナに伴う需要増や悪天候による不作の影響を受け、急速に上昇している。国際指標であるハード・レッド・ウインター(米国産硬質小麦)輸出価格は、昨年10月の1トン当たり354ドルから1年で437ドルにまで上昇。さらにこの間、大幅な円安ドル高が進み、想定輸入価格は6割ほど上がったことになる。
わが国の小麦輸入は、国内の小麦農家保護のため国が管理している。アメリカ・カナダ、オーストラリアから政府が一括して5銘柄の小麦を買い上げ、政府が4月期と10月期に売渡価格を決めて国内製粉会社に売り渡している。
したがって国際市況の急騰がダイレクトに伝わらないよう、政府が国内メーカーのクッション役を担っているともいえる。
10月期の政府売渡価格は4月期の価格を適用し、据え置く緊急措置がなされたが、いずれは値上げ分を反映しなければならない。
値上げリスクをカバーする日清製粉ウェルナの商品戦略
「巣ごもり需要」で沸き起こったお好み焼きブーム。
お好み焼きのミックス粉を手掛ける日清製粉ウェルナは今年8月、新商品として「日清 具材を活かすお好み焼粉」(200g、400g)、定番の「日清 お好み焼粉」では従来の500g、800gよりも小さい「300g」をそれぞれ発売した。
シンプルな味わいが特徴の「具材─」はその名の通り、魚介類や肉類などの具材の風味を引き出すほか、焼きそばと合わせる「モダン焼き」に向いているという。
今回のラインアップ刷新で特に注目したいのは、定番として底堅い主力商品「日清 お好み焼粉」のサイズバリエーション追加だ。800g・500gの従来アイテムに、新たに300gをラインナップさせた。
発売理由について同社は「(子どもが小さい家庭でも)1回で使い切れるサイズが欲しいというニーズに応えた」という。
500gは家族4人ならちょうどいいし、800gはもっと大勢でワイワイやるときに使いたいサイズだ。コロナ禍が収束しない中、大人数を集めたホームパーティーもお預けだ。
一方、3人以下の家族構成に対応したサイズはなかった。
家庭用食品で商品戦略を立てるとき、ターゲットとしてまず意識するのが家族構成だ。日本の世帯構成人数は減り続けていて令和2年国勢調査によると、1世帯当たり平均は2.21人。核家族化の進行とともに一貫して減り続けている。かつてボリュームゾーンとされてきた3-4人世帯は3割を切るまでに落ち込んだ。
代わりに増えたのが2人世帯と単身世帯だ(66.1%)。こうした観点からも300gは、家族構成変化に対応した“2人でもお好み焼きを楽める”商品だといえる。