巣ごもり需要で始まった「おうちお好み焼きブーム」は物価高で止まったのか
コロナ禍は完全な収束を見ずに流行を繰り返しているものの、行動制限は緩和され経済活動も以前の水準に戻りつつある。一方、コロナ禍を契機に在宅ワークなど生活様式に起きた変化をはじめ、化石燃料、農水産物等の価格高騰と円安等による物価の上昇は、国民の消費行動にも影響を与えている。国内にコロナ禍が到来した2020年春以降、巣ごもり需要により「おうちでお好み焼き作り」がブームとなったが、その後の情勢変化で原料メーカーに影響はあったのだろうか。ソース、青のり、ミックス粉の主要メーカーに話を聞くと、三者三様の動きがあった。
「創業100周年」オタフクソースの場合 お好み焼きブームで前年比15%増
お好み焼きに欠かせないソースを製造するオタフクソース(広島市)は大正11(1922)年11月26日に創業、ことし100周年を迎えた。
ソースの製造・販売は戦後の1950年からで、今ではお好み焼き用ソースだけでも10種類以上を展開し、主力の「オタフク お好みソース」をはじめ「大人の辛口」「野菜と果実」「ガーリーカリー」といった特徴的なフレーバーや「塩分50%オフ」、機能性表示食品を取得した「糖類70%オフ」など、多様なアイテムで消費者のニーズに応えている。また、9月には自社サイトに開設していたオンラインショップを楽天市場に完全移行し店頭で棚を確保できない商品も提供しやすくなった。
2020年の巣ごもり需要で、お好みソースに追い風が吹いた。調査会社による消費者パネル調査によると、同年の市販用「オタフク お好みソース」の売上は前年比15%増となった。
“特需”はソースにとどまらない。
「お好み焼き関連商品」として販売している「お好みこだわりセット」も大ヒットし、店頭では欠品が相次いだ。このセットには、山いも入りお好み粉、イカ天をブレンドした天かす、青のりが一袋にまとまっている。消費者はキャベツや生鮮系の具材を買うだけで済む。分量も2人用、4人用と今どきの家族で食べ切れるボリュームだ。
再びお好みソースに戻るが、2021年は前年比こそマイナスだったが、コロナ禍前の水準よりはプラスで推移した。
さまざまな制限が解除され、消費行動も選択の幅が広がったが、2022年に入ると、物価高や円安が進み、消費者にもメーカーにも影を落としている。
ソースの原料であるトマトペーストなどの原料価格と物流費の高騰を受け同社は6月、2015年以来となる価格改定を実施した。家庭用の「オタフク お好みソース」(500g)の希望小売価格(税別)を360円から390円にするなど家庭用60品、業務用232品を5~9%引き上げた。
主要原料であるトマトペーストの価格高騰は世界的な消費量増大に対して異常気象によるトマトの不作、エネルギーなどの価格上昇に加えて円安が追い討ちをかけた。
オタフクソースはトマトペーストを通年で安定的に確保するため、北半球と南半球で産地を分散し安定調達に努めてきた。だが、今は「コストより原料確保が最優先の状況」という。今後は北半球、南半球の産地の調達バランスをとりながら安定調達とコスト維持に努めていく必要が出ている。
「コロナ禍をきっかけに、家庭での消費が伸びた名古屋以東の地域でお好み焼き作りが定着するよう、おいしく簡単に作れるレシピを動画や教室を通じて紹介し広めていきたい」。