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21年政策は「食事のデスティネーションストア化」業績回復をはかるミニストップ新施策の全貌

ミニストップ(千葉県/藤本明裕社長)は3月9日、2021年度商品政策発表会を行った。2020年度、コロナ禍で業績悪化に苦しんだコンビニエンスストア(CVS)業界だが、ミニストップが2021年度業績回復のために掲げる政策とは。

苦境のCVS、ミニストップの柱は「デスティネーションストア化」

 ミニストップの藤本明裕社長は2020年度について、「コロナ禍で起こった生活変化に対し、有効な打ち手がないまま一年が過ぎてしまった」と振り返った。20年度の同社の既存店客数(1店1日あたり)は、前年比80%半ば〜90%を少し上回る程度で推移しており、それに伴って売上高(同)も前年比90%台と前年度割れの状況が続いている。この状況を打破するため、ミニストップが21年度の政策の柱として掲げるのが「食のデスティネーションストア」化だ。

 デスティネーションストア化とは、「目的買いの店」のことだ。食事を購入するための目的地としての立ち位置をより明確に打ち出すことで、来店頻度の向上をねらう。この背景にはコロナ禍による“内食化”で、自宅での調理などに比べて割高感のある弁当・総菜類の需要が減少したことがある。デスティネーションストア化のために、高付加価値の弁当・総菜類の開発や、コロナ禍でも好調だったコールドスイーツのさらなる強化によって、意図して「ミニストップに行こう」と顧客に思ってもらえる品揃えをめざすという。

 付加価値を高めた弁当「やみつキッチン」

 具体的な商品政策については以下の通りだ。

 まず、弁当類の改革として「やみつキッチン」シリーズを展開する。ミニストップ史上最大級の総重量600gの「ずっしり極!タルタルチキン南蛮弁当」、6mmの厚みのあるチャーシューを贅沢に使用した「チャーシュー弁当」(いずれも555円:以下すべて本体価格)などの発売を3月に予定。いずれも、ボリュームや食べ応えなどの付加価値を付与した商品になっている。先駆けて2月23日に同シリーズとして発売された、山形・米沢の名物駅弁をイメージした「駅弁風 牛めし重」(555円)は人気を集め、既に再販が決定するなど順調な滑り出しだという。

 また、同社取締役 商品本部長の仲澤光晴氏は「これらの弁当は、本来なら600円を超える価格帯の品質」だと話す。質、量などで付加価値を高めた「やみつキッチン」シリーズだが、価格が高くなりすぎてしまっては顧客に受け入れられない。そこで、「中間コストや製造原価を徹底的に見直すことで、555円という手に取りやすい価格を実現できた」と仲澤氏は胸を張る。
「やみつキッチン」シリーズは今後、調理パンやサラダ類、スイーツなどにも拡大していく計画だ。

コールドスイーツの強化で来店頻度向上をねらう

 好調なコールドスイーツ類の強化にも注力する。根強い人気のあるミニストップの「ソフトクリーム」をトッピングとして生かした「デザートドリンク」で競合との差別化を図り、「タピオカに続くヒットカテゴリーに成長させる」と仲澤氏は意気込む。「飲めちゃうデザート」と銘打ち、4月に「飲むチョコバナナ」など2商品の発売を予定している。ミニストップがラインアップするコールドスイーツの中でも、持ち帰りやすさや食べやすさを訴求した商品になっており、購入シーンの拡大につなげたい意図だ。

 また、ミニストップが展開するソフトクリーム専門店「MINI SOF(ミニソフ)」でのデザートドリンク販売や、逆にMINI SOF独自のコールドスイーツのミニストップでの販売なども検討中だという。

 ほかの施策としては、コロナ禍で需要の増えたパスタなどの冷凍食品を目線の位置に配置したり、店内製造総菜の陳列を時間帯ごとの需要に合わせて変更したりするなど、売場づくりも工夫する。また、家飲み需要を捉えるため、冷蔵酒・常温酒問わず酒類のバリエーションの拡充なども実施。併せて店内調理の総菜をおつまみとして訴求し、夕方以降の集客に繋げたい考えだ。

CM・アプリなどで情報発信を強化

 商品強化によって客数回復をねらうミニストップだが、商品が世間に知られなければ客足は伸びない。そのため、21年度は積極的にCMを活用し、PRにも注力するという。とくに3月からの第1四半期に集中的にCMを打ち、これまでも行っていたスポットでのCM放映だけでなく、いつも同じ番組に提供を行うタイム枠でのCMも導入する。毎週、毎日同じ番組を見る視聴者に、継続的に新商品やキャンペーンを伝えることができる点で有利なためだ。

 また、21年度下期には「ミニストップアプリ」のリリースも予定する。イオングループの電子マネー「WAON」の利用・カード連携はもちろん、アプリ独自の販促や情報発信ツールとして広く活用していきたい考えだ。

 藤本社長は、「21年度は毎日行きたくなるデスティネーションストア化の始まりの年にしたい。20年度はコロナで打撃を受けたが、新常態の定着によって生活に身近なコンビニにはチャンスも生まれると感じている」と語った。かねてより発表されている、加盟店と本部が人件費や廃棄などの負担を分担する新しいFC契約、「ミニストップパートナーシップ契約」も21年度いよいよスタートする。ミニストップにとって21年度は変革の一年となりそうだ。