“カウンターガストロノミー”が美食界を席巻する理由とは
カウンターが熱心な顧客を生む
ここまでカウンターガストロノミーが流行しているのには理由がある。ゲストの立場からすれば、すぐ目の前で調理してくれるので、臨場感と特別感がある。つくり手とコミュニケーションがとれるのも嬉しいことだ。カウンター席ならではの“場の一体感”もあり、ファインダイニングらしい一期一会の食体験を紡ぐことができる。
店にとってもメリットがある。カウンターガストロノミーでは基本的に「おまかせコース」だけなので、フレキシブルにメニューが組める。食材をロスしづらいので、効率がいい。キッチンスタッフがサーブできるので、ホールスタッフを減らせ、人件費を削減できる。ゲストの様子を把握でき、最高のタイミングで料理を提供できるのもいい。調理前の素材を披露して、ゲストの気分を盛り上げられる。つくり手が“張り付き”なので、高い客単価も納得されやすい。ゲストと絆を深めることができるので、熱心なリピーターも生まれるのだ。
カウンターガストロノミーが普及しているのは、“権威”から評価されるようになったことも大きい。ミシュランガイドでは、カウンタースタイルを主とするレストランの評価は高くないとされてきたが、六本木「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」(2003年4月25日)が見事に星を獲得し続けている。かの故ジョエル・ロブション氏が、自身初めてとなるカウンタースタイルのフレンチにチャレンジし、新しいガストロノミーの形を創り出したといってよいだろう。