“カウンターガストロノミー”が美食界を席巻する理由とは
他ジャンルでも「カウンター」がトレンドに
イタリアンでもカウンターが耳目を集めている。杉本功輔氏が紡ぐモダンイタリアンの六本木「merachi(メラキ)」(2021年12月29日)、懐石イタリアンを標榜するヴィットリオ・コッキ氏の神泉「COCCHI(コッキ)」(2023年4月14日)、「ミシュランガイドNewセレクション」に掲載された小川慎二氏の参宮橋「Orchestra(オルケストラ)」(2023年9月1日)、焚き火を取り入れた江口拓哉氏の虎ノ門ヒルズ「焚き火イタリアン falò+(ピュウファロ)」(2024年1月16日)、素材本来の味を引き出した向原季幸氏の自由が丘「エフェット」(2024年4月3日)は、臨場感に富む。
カウンタースタイルのイメージがない中国料理でもトレンドになりつつある。ミシュランガイド一つ星の安達一平氏の麻布十番「一平飯店」(2022年3月1日)、日本ワインも充実した中園健司氏の人形町「中国菜 ARATA(アラタ)」(2023年1月8日)、ミシュランガイドで一つ星を獲得し続けてきた小林武志氏がオープンした六本木「KOBAYASHI(コバヤシ)」(2024年6月6日)は、秀抜のカウンターチャイニーズといえよう。
他のジャンルでは、発酵と薪焼き(まき火で焼くこと)をコンセプトにした國居優氏の渋谷「SHIZEN(シゼン)」(2023年1月20日)、小林悟氏が紡ぐモダンスパニッシュの清澄白河「eman(エマン)」(2021年12月23日)、美食家のビア氏が手掛けたタイと和食が融合した六本木「美会(ビア)」(2022年3月28日)が個性的だ。
ホテルのレストランでもカウンタースタイルが散見される。マンダリン オリエンタル 東京の牛窪健人氏によるイノベーティブレストラン「タパス・モラキュラーバー」(2005年12月2日)やダニエレ・カーソン氏の「ピッツァバー on 38th」(2014年1月30日)は、わずか8席だけでエクスクルーシブ感がある。大塚久輝氏によるジャヌ東京の「SUMI(スミ)」(2024年3月13日)は、ラグジュアリーホテルにしては珍しい割烹スタイルの炭火焼料理だ。