食品スーパーで、「総菜の売上」だけがどんどん伸び続ける納得の理由とは
コロナ前より、インストア加工への意欲が高まっている理由
コロナ禍は、外食からの中食シフトに拍車をかけました。この商機が、食品スーパーの総菜開発を活性化させたことは間違いありません。
ベイシアは、コロナ以前にもフランス料理の総菜シリーズを試みたほど、外食分野の需要開拓に意欲的なチェーンです。7月に改装した行田店(埼玉県行田市)を取材した時は、韓国料理のメニューを集めた「ソウル市場」や、肉料理の「デリヴィアンド」を展開していました。デリヴィアンドは店内で作るグリル系肉料理のコーナーで、ハンバーガーは個包装されたファストフード式ではなく、レストラン的なプレートスタイルです。
コロナ以前に比べ、チェーン各社のインストア加工に対する意欲は高まっていると感じます。工程の一部にプロセスセンター等を入れるとしても、最後は店内調理で差別化するという商品が目立っています。
コロナ以前は、店舗の作業軽減も喫緊の課題でした。アウトパック総菜の研究開発に比重があったように思います。ベンチマークの対象としてコンビニエンスストアを挙げる声も聞かれました。
新たなカテゴリーに挑戦できる背景
コロナ以降、外食をベンチマークした商品や、スイーツなどの専門店を意識した開発が増え、新しいカテゴリーに挑戦する事例も増えています。そして差別化の決め手として、インストアで加工できる強みを活かすという話をよく聞くようになりました。全体の作業負荷をコントロールしつつ、手をかけるべきところには人時を投入するという発想です。
ライフコーポレーションは、7月に開設した西荻窪店(東京都杉並区)に、対面形式の天ぷらコーナーを導入しました。農産部門の素材を使い、油にはキャノーラ油にオリーブ油を加える工夫をしています。コロナ禍でバラ販売をしづらくなった揚げ物ですが、ガラスケースに陳列する付加価値スタイルで訴求する試みです。「バイ・オーダー」での提供も行うといいます。
インストアで相当量を製造できる体制を備えていることは、コンビニやドラッグストアに対する食品スーパーの差別化ポイントであることは確かです。コロナ以前は、人手不足や作業負荷、さらには食品廃棄の観点からもコンビニ型の総菜開発に関心を向ける傾向にありましたが、コロナ禍にあって食品スーパー自体の売上が伸びたこともあり、業態本来の強みに自信を取り戻したのかもしれません。