【流通テクノロジーレポート】
デジタルマーケティングの可能性と課題
そんな状況を打開しようと導入したのがトレジャーデータのデータ連携ツールである。自社EC、CRM、商品などのデータすべてをいったんそこに集約し、BI(ビジネスインテリジェンス)やマーケティングオートメーション、広告などへの連携を行った。これによって、データ連携に溺れていた状態を抜け出すことができたという。
データマネジメントは業務のクオリティを左右する。必要なデータを使いやすい状態で持つことが重要になる。データマートをつくり込む時間もないし、そもそもつくり込むほど汎用性がなくなっていく。汎用性が高いほうが応用がきくし、集計・抽出のスピードよりも連携する自由度の高いほうが連携開発に時間がかからないため、業務もスムーズに進められるというメリットがある。
アマゾンがオフラインに進出する本当の理由
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「なぜチャネルのデジタルトランスフォーメーションは進まないのか」
そんな問いを投げかけたのが、オイシックスドット大地執行役員統合マーケティング部部長 Chief Omni-Channel Officerの奥谷孝司氏と、大広プロジェクト・プランナーの岩井琢磨氏である。
この問いに対する両氏の仮説が、「チャネルのデジタルトランスフォーメーションを、デジタルを導入して店舗オペレーションを効率化することだと捉えているからではないか」というものである。
こう捉えていない会社の代表として挙げるのが米アマゾン・ドット・コムである。
アマゾンの戦い方は他社とは異なる。たとえばオフラインへの進出だ。アマゾンゴーは無人レジのコンビニだが、ねらいは無人レジではなく、客の行動データを得ることだという。オフラインで客の行動を把握して、オンラインでそのデータを活用しようというのだ。
一方アマゾンブックスには、レジもあり、店員もいるが、値札がない。スマホアプリでスキャンすると、プライム会員と非会員の価格やレビューなどが示される。オンラインの情報で商品を選択し、オフラインで購入するのである。アマゾンブックスは採算がとれていないと言われているが、収益化よりもむしろ、顧客とつながりをつくって本を選ぶという体験を提供し、そこでデータを把握して、オンラインでそのデータを活用するのが真のねらいだと見る。
米自然派スーパーマーケット、ホールフーズの買収についても、そのねらいはオフラインで把握した客のデータをオンラインで活用することだという。
岩井氏は「オフラインで売上をあげるのではなく、客とのつながりをつくって、オンラインに引き込んでいく。マネタイズはあとでも構わないと考え、オフラインに進出していると見るべきだ」と指摘する。
オフライン企業がECに力を入れるのではなく、デジタルによって客とのつながりをつくる。オンラインとオフラインを行き来するカスタマージャーニーを把握し特別の購買体験を提供し、オンラインとオフラインで丁寧に顧客時間を設計する――。奥谷氏はこう指摘したうえで、オフラインでもオンラインでも、単なる買物の場ではなく、エンゲージメントを生む場をつくり、そこで優れたつながりを客とつくり、それをプロモーション戦略や価格戦略、商品戦略に生かしていくという考え方が必要だと話している。