【流通テクノロジーレポート】
デジタルマーケティングの可能性と課題

2018/05/09 10:59
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消費者のデジタル化の浸透、EC(ネット通販)の拡大――。消費環境が変わるなか、流通業はデジタルマーケティングにどう取り組んでいけばよいのか。データ収集・分析・連携サービスのトレジャーデータが2月に開催したカンファレンス「PLAZMA」のセッションから、流通業のデジタルマーケティングの可能性と課題を探った。

 

スマホアプリを活用し接客を拡張するパルコ

パルコ執行役グループICT戦略室の林直孝氏
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 ファッションビル運営大手のパルコはかねてデジタルマーケティングに積極的に取り組んできた企業の1つだ。

 

 パルコは、オムニチャネルのプラットフォームづくりとしてデータ活用を開始。テナントのブログを用意したほか、「カエルパルコ」という買物機能を提供した。そしてスマートフォンアプリの「ポケットパルコ」を開始し、デジタルマーケティングの取り組みを推進していった。ねらいは、テナント従業員の接客を拡張し、商業施設運営者として集客を図ることだった。

 

 接客の拡張は、スマホアプリの活用によって第二段階に入った。パルコのデジタルマーケティングを指揮してきた同社執行役グループICT戦略室の林直孝氏は、「データの可視化による顧客の行動の分析、それに基づくパーソナライズされた施策がようやくできるようになってきた」と話す。

 

 具体的には、カスタマージャーニーにおける来店前、来店中、来店後という顧客接点ごとに「コイン」というポイントを提供する。顧客の許可を得たうえで、このデータを分析して集客に生かしている。

 

 センサーデータの活用にも着手している。ファッションビルでは気温や天候に来店客数が左右される。そこで気温や天候のデータを使い、タイムリーに来店促進策を打ち集客につなげることが目的だ。池袋パルコの屋上にセンサーを設置し、気温や天候をリアルタイムで検知。スマホのジオフェンス(仮想的な地理的境界線)機能を使い、雨の日に、池袋パルコをよく利用する客だけに、「雨の日特典として5000コインを提供する」といったプッシュ通知を出すのである。

 

 拡大するECに対して、リアル小売店舗はどう差別化していくのか。この問いに、林氏は「接客という販売員の強みを生かすために、接客を進化させることが必要だ。テクノロジーを使って販売員が接客業務に時間を割けるようにする」と話す。それによってECでは得難い買物体験を提供できるという。

 

 パルコは今後、客の行動データだけでなく、テナントの商品データも取り込み、商品ごと、あるいはサービスごとに客とのマッチングの確率を高め、買上率を高めていこうとしている。

 

ユナイテッドアローズでのデータマネジメントの意義

ユナイテッドアローズデジタルマーケティング部コミュニケーションチームサブリーダーの中井秀氏

 一般に、企業がテクノロジーを活用する目的は顧客体験価値を向上させることだが、業務自体にもたらされるメリットも少なくない。業務の観点から講演したのが、ユナイテッドアローズデジタルマーケティング部コミュニケーションチームサブリーダーの中井秀氏である。

 

 ユナイテッドアローズは19のストアブランドを有し、国内240店舗強の衣料品専門店を展開する。デジタルマーケティングにも早くから取り組んできた。同社のデジタルマーケティング部はブランド横断組織。デジタルコミュニケーション、アナリティクス、デジタルコマースの3つのチームから構成される。ミッションはワントゥワンのコミュニケーションを最適化し、客のライフタイムバリューを向上させていくことだ。

 

 ユナイテッドアローズは2016年8月、オンラインストアとリアル店舗の会員組織を統合した。しかし、データ統合ができておらず、別々のシステムが相互に連携しながら動いていたため、データ量が足りずマーケティングオートメーションによる施策を打つことができなかったという。

 

 データ不足は、自社ECと広告配信、CRMとメール配信といったデータ連携の開発を招いていった。中井氏は「データ連携に溺れた結果、ベンダーが疲弊し、データを施策につなげられなかった」と言う。

 

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