人手不足を解消するAI搭載「ワンダーレジ」
商品化に向けて実証確認がスタート!
人手不足の解消とレジ待ち時間の短縮をめざし、世界初の人工知能(AI)搭載レジ「ワンダーレジ」を開発したサインポスト(東京都/蒲原寧社長)。電気通信大学生協(東京都調布市)で実証確認を今夏スタートした。学生からの評判も上々で、確かな手応えを得ている。
ディープラーニングにより
すみやかな決済を実現
拡大画像表示 電気通信大学生活協同組合のコープショップ店長、高橋伸嘉氏
拡大画像表示 イノベーション事業部の佐々木友洋氏
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超少子高齢化時代が到来し、人手不足が深刻化している。小売業も例外ではなく、とくにコンビニエンスストア(CVS)などは、混雑時、レジ前に行列ができることも珍しくない。待ち時間が長くなるとストレスが大きくなり、購入をあきらめる消費者もいる。人手不足は多大な機会損失にもつながっている。
こうした問題を解決しようと、金融機関や行政機関を中心にシステムソリューションを提供するサインポストは、AIを用いた次世代レジ「ワンダーレジ」を電気通信大学の柳井啓司教授の助力を得て共同研究し、自社開発した。
ワンダーレジのベースとなる仕組みは、脳の神経回路にヒントを得たディープラーニング(深層学習)である。データの特徴をより深いレベルで学習するとともに、より高精度で認識や分類を行うことができる、AIの学習手法だ。
購入したい商品をワンダーレジのテーブルに置くと、搭載したカメラで商品の特徴的な要素を見つけ出して、何であるかを識別。そして、あらかじめ登録された商品情報(JANコード)に紐付け、瞬時に商品点数と合計金額をはじき出す。そして顧客は電子マネーで支払う。ワンダーレジという名称のとおり、すみやかに決済が行われる「驚くべき(Wonder)レジ」なのだ。加えて、既存のPOSシステムと連動できるため、大規模な設備投資は必要ないというメリットもある。
これまで自社のラボ内で開発を進めていたが、共同研究の一環として、電気通信大学構内のコープショップで今年7月31日より実証確認を開始した。商品化に向けた最終チェックに着手したのである。
電気通信大学の生協で実施
店側も学生も高評価
拡大画像表示 興味津々でワンダーレジを使う学生たち
拡大画像表示 スタッフの誘導によって、ワンダーレジを初めて利用する学生
拡大画像表示 AIが商品認識に迷った時には、レジの正面の枠が赤色に点灯し、決済を止めて店員を呼ぶ仕組み
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今回の実証確認に協力した電気通信大学生活協同組合のコープショップ店長、高橋伸嘉氏によれば、情報理工系の大学だけに、学生は興味をもってワンダーレジを使ってくれていると話す。実は、実証確認の実施時期は大学の夏休み期間に重なるため、店の利用客は通常期に比べると、そう多くはない。だが、稼働前に柳井研究所の公式ツイッターで案内されたことで、その存在が広く知れ渡った。なかには、「つい使いたくなる」とたびたび訪れるリピーターもいるとか。
「誤った商品の置き方で読み込めない場合もありますが、正しく置き直せば、その後は早いですね。AIの認識率は徐々によくなっていると感じます」と高橋氏は話す。ゆくゆくは新学期など利用者が増える時期にこそ稼働させたいと期待を込める。
課題に対して、サインポストでは大学構内に専用のラボを置き、対応にあたる。常駐することで、すばやい問題解決を図るのがねらいだ。
「実際の店舗で利用してもらうことで、自社のラボでは想定していなかった課題がわかりました。一つひとつ改善しながら、認識率を高めていきたいですね」とイノベーション事業部の佐々木友洋氏は話す。
「シンプルな操作で使いやすい」「画像認識は想像以上に速い」「どんな置き方でも認識できれば、さらに便利」と学生の評価は高い。実証確認を通して、同社では確かな手応えを得ている。