売上増も課題山積の米国ドラッグストア、2025年は復調となるか
悪材料は出尽くした?25年は店舗小型化で勝負か
このように、ドラッグストア業界では一朝一夕に解決しにくい構造的な課題が山積している。一方で、悪材料は24年中に出し切ったとの見方も一部で出ており、25年は復調に転じるかが注目されている。
まず、ウォルグリーンは収益性改善の新たな試みとして、従来型店舗よりも売場面積が小さく、品揃えも売れ筋に絞ったフォーマットを100店ほどオープンしている。これらの小型店では、収益率の高いプライベートブランド商品の割合が高く、経営陣から期待されている。その成否は25年に明らかになろう。
一方、EC大手のアマゾンは処方薬宅配を拡大しており、25年に、新たに20都市で即日宅配を提供開始する予定だ。これにより、米総人口の45%が同サービスを利用できるようになるため、ドラッグストア業界でも対抗のサービスを充実させていくと思われる。
とくに、近年のドラッグストア閉店ラッシュにより、1600万人が薬局のない地域に住んでいると推定される。よって、今後、ドラッグストアチェーンは、閉店した地域における処方薬宅配を強化すると見られる。
この傾向の背景として、ドラッグストアチェーンを悩ます薬剤師不足が挙げられる。多くの薬剤師が定年退職して人材の需要が増加する一方で、大学の薬学部への入学志願者数が減り続けているからだ。人材不足のためドラッグストアにおける薬剤師の負担は重くなっており、各社が抜本的な対策を打ち出せるかが焦点となりそうだ。
翻って、1月の第2次トランプ政権発足により、厚生長官に指名された予防ワクチン懐疑派のロバート・F・ケネディ・ジュニア氏の人事が承認されれば、ドラッグストアが指定接種場所になっている一部のワクチンの売上が減少することが予想される。また、医療保険政策で何らかの変更が実施される可能性もある。
一方で、同氏は「米国を再び健康にする(Make America Healthy Again)」をスローガンにしており、ドラッグストアにおける健康食品やサプリメントの売上が伸びる可能性もある。
いずれにせよ、米人口の高齢化でドラッグストア市場の潜在的な規模は拡大してゆく。そのため、他業種からの参入を上手くかわしながら、創意工夫で利潤を高められるチェーンが「勝ち組」として残りそうだ。