米国で「やせ薬」が大流行 メーカー、小売が受ける「大きな影響」とは
不健康な食品は「新たな石炭」か
とくに影響を強く受けるのは、スナック菓子やペーストリー、ソフトドリンクやアイスクリームなどいわゆる「不健康な食品」だ。実際に、食品大手の米ゼネラル・ミルズ(General Mills)やペプシコ(PepsiCo)では2023年からこうした食品の売上が軒並み落ちている。ただし、インフレで中間層や低所得層の消費が息切れし、プライベートブランド(PB)などに乗り換えている影響も大きいので、「やせ薬」の影響は現時点では軽微だと思われる。
米ブルームバーグ(Bloomberg)の端末を利用する投資家を対象に実施されたマーケッツ・ライブパルス(MLIV)調査では、参加した4人に3人近くが、「砂糖や脂肪分、超加工食品(UPF)を製造・販売する企業は分量を減らすかレシピを調整、あるいは資産を完全に売却するなどして、事業計画を見直すべきだ」と回答した。
資産運用企業の米モンタナロ・アセット・マネジメント(Montanaro Asset Management)のESGスペシャリストであるケイト・ヒューイット氏は「不健康な食品は『新しい石炭』かも知れない」と指摘しており、減量薬がさらに普及するにつれ、食品製造企業や小売に対応圧力がかかっていくだろう。
事実、スイスに本社を置く世界最大の食品・飲料会社ネスレ(Nestlé)やゼネラルミルズなどは、やせ薬を服用する人が筋肉をつくる栄養素が不足しないよう、タンパク質補強の機能性がある冷凍食品などを順次発売していく予定だ。
不健康な食品の売上が落ちてゆく一方で、このように付加価値を付けた高額な機能性食品の需要は高まるだろう。「ジャンクフード」の売上が落ちた分を、利幅の大きい食品などで補える可能性がある。減量薬を販売するドラッグストアや関連商品を扱うスーパーマーケットなどにもよい商機だ。米TDコーエン証券のアナリストは、「米小売の商品棚構成が変わる」と予測している。