気象庁が9月19日に発表した「寒候期予報」によると、今年は暖冬になる確率が極めて高くなっています。今冬、どのような商品を売り込んだらよいか悩ましいと感じる小売企業が多いのではないでしょうか。本稿ではTrue Dataが取り扱う購買データの分析から、今冬の消費動向のヒントを示したいと思います。
例年にない「寒候期予報」
気象庁は9月19日、寒候期予報を発表しました。寒候期予報とは12~2月を対象とした季節予報で、毎年9月の3カ月予報と同時に発表されます。それによると今冬が平年より気温が高くなる確率は東北・北海道で40%、それ以外の地方は60%になっています。
寒候期予報は、気温が「平年より低い」「平年並」「平年より高い」の3つのカテゴリーに分けた場合のそれぞれの確率で発表されます。その3カテゴリーのうちの1つに「60%」という高い数字が示されたのは極めて珍しい事例です。それほど今冬は例年に比べて気温が上がる可能性が高いと気象庁は予想しているようです。
True Dataの取り扱う購買データから、秋冬物の需要が大きく伸びる10~12月の期間に限って、気温が高ければ高いほど売上が多くなる(気温と売上の正の相関関係が強い)食品カテゴリーをピックアップしました。その一覧を以下の表に示します。
暖冬時、注目したいアイテム一覧
結果を考察し、気になるポイントをまとめます。ランキング上位は飲料やアイスが占めており、季節の進みに伴って気温が下がっていく秋冬であっても気温が高ければ飲料およびアイスの需要が高まることがわかります。
ただ、水や麦茶は飲料の中でも順位が低めで、相関がそれほど強くありません。飲料の中でも味の濃いものが好まれる傾向にあるのかもしれません。
2位のゼリーは、非常に関係性が強いため、冬場の高温時売り込みを強化したいアイテムです。アイス・飲料以外でランクインした「中華料理の素」「シリアル類」「普通卵」も注目カテゴリーです。とくに「中華料理の素」は、鍋ものの代替メニューとして多くの家庭に支持されている可能性があります。
もちろん秋冬の気温が高い日であっても、中心的な売れ筋は鍋つゆや鍋物野菜が位置付けられるのは間違いありません。上表のようなアイテムの強化と同時並行で、定番である鍋もの料理やシチューなどをいかにお客に支持してもらうかという企画力も重要です。
23年夏、世界の平均気温がかつてないほど上がったことから、「地球沸騰化」という言葉がよく使われました。今後も暖冬になる年が増えていく可能性はおおいにあり、小売各社はその備えが必要になるでしょう。まずは今冬、本稿を参考に準備してみてはいかがでしょうか。