2023年のコンビニエンスストア(CVS)市場規模は前年から4%超伸び11兆6593億円となった。人流も回復し既存店客数は2年連続で増加したほか、既存店売上も前年を上回るなど好結果を残した。牽引したのは大手3社だ。しかし総店舗数は減少しており、大量出店による成長は壁にぶつかっている。
2023年度、大手3社は好業績を残す見通し
日本フランチャイズチェーン協会(東京都)によると、2023年(23年1月~12月)のコンビニエンスストア(CVS)の市場規模(全店ベース)は前年比4.3%増の11兆6593億円、既存店ベースでも4.1%増だった。全店、既存店ともに前年を上回る好結果を残した。
来店客数を見ると、コロナ禍による行動制限がなくなり、さらに23年5月には新型コロナウイルス感染症の5類移行により人流が通常に戻り、CVSの来店客数は全店ベースで3.0%増、既存店でも2.9%増となり、いずれも2年連続のプラスとなった。
一方で、店舗数は21年をピークに漸減傾向にある。23年12月末現在の店舗数は22年12月末比125店舗減の5万5713店舗。21年12月末比では237店舗減少している。
CVS大手3社の業績は好調だ。
第3四半期(3Q)累計(2023年3月~11月)の既存店売上高伸長率は、セブン-イレブン・ジャパン(東京都:以下、セブン-イレブン)が3.8%増、ファミリーマート(東京都)が5.8%増、ローソン(東京都)は4.9%増(ローソン単体)。なかでもファミリーマートは29カ月連続で前年実績(24年1月時点)を上回っている。
また、全店平均日販も各社は前年同期から伸ばしている。3Qで見ると、セブン-イレブンは2.8万円増の69.8万円、ファミリーマートが1.9万円増の55.3万円、ローソンは2.8万円増の54.9万円となった。依然、セブン-イレブンと2社との差は大きく、セブン-イレブンは期中に平均日販70万円超えを達成した。
出店については各社それぞれの考え方が表れている。
セブン-イレブンは3Q時点の店舗数は期首から53店舗増の2万1305店舗。同社は即時配達サービス「7NOW」の提供店舗の拡大に注力しており、24年2月に約1万2000店舗を達成、24年度中には全店展開する予定だ。
ファミリーマートは、3Q累計で294店舗(単体ベース)を閉店、3Q末の店舗数は期首から123店舗減の1万6410店舗となった。同社では「コンビニエンスウェア」の展開により、女性客の獲得につなげている。
ローソンは同5店舗減の1万4626店舗。店内調理の「まちかど厨房」「無印良品」などの導入により、競合他社との差別化を図ってきたが、24年2月KDDIによる公開買い付けの開始および資本業務提携契約の締結により、公開買い付け成立後にはローソンは上場廃止となる。以降は三菱商事とKDDIを親会社として新たな体制をスタートさせることになる。
店舗網を生かした新しい成長戦略を模索
間もなく23年度の本決算が発表になる。CVS大手の取り組みはどのような結果となって現れてくるのだろうか。上場CVS各社の決算発表の前に、前年度決算でのチェーン全店売上ランキングはどうなっていたのか、ここで振り返っておこう。
22年のCVS市場規模は対前年比3.7%増となり、コロナ前の19年を超えるまでに回復を果たした。
23年2月期のチェーン全店売上高は、首位のセブン-イレブンが前期比4.0%増の5兆1487億円、2位のファミリーマートが4.1%増の2兆9575億円、ローソンは4.0%増の2兆2995億円。セブン-イレブンとローソンは20年2月期の実績を上回った。
中堅CVSの業績は明暗が分かれた。
北海道を地盤とするセコマの22年12月期売上高は5.3%増の2005億円。強みとする製造小売業(SPA)モデルを生かし、ふだん使いの商品をリーズナブルに提供する価格戦略で支持を得た。
ミニストップは23年2月期、チェーン全店売上高は2.0%減の2869億円。大手3社のシェアが9割超という寡占市場で存在感を発揮できず、苦戦を強いられている。
回復を果たしたCVS市場だが、店舗間競争が激化するなかで、かつてのような大量出店による成長が難しいことに変わりはない。そうしたなか、各社はCVSの店舗網を生かした新しい成長戦略にアクセルを踏み込んでいる。
ファミリーマートは、リテールメディアの国内リーディングカンパニーをめざすとして、デジタルサイネージの導入店舗を積極的に拡大しており、24年2月末時点で約9520店舗に設置している。