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イオン、22年度決算を発表!GMS事業が黒字化も残された課題とは

イオン(千葉県/吉田昭夫社長)が4月12日に公表した2023年2月期の連結決算は、売上高に相当する営業収益が対前期比4.6%増/前期から4008億円増の9兆1168億円、営業利益が同20.3%増/同354億円増の2097億円、親会社に帰属する当期純利益が同228.7%増/同148億円増の213億円だった。売上高は過去最高の9兆円台に達し、営業利益もコロナ前の水準に戻ってきた。1月13日の第3四半期決算発表時の見通しからは、大きな変化がなかったものの投資家は好感、発表翌日のイオン株価は2.7%上昇した。

(時事通信社)

セグメント別にみるイオンの2022年度決算

 イオングループは、 総合スーパーの「GMS事業」、スーパーマーケットの「SM事業」、ドラッグストアの「ヘルス&ウエルネス事業」、イオンモール(千葉県)を中心とした「ディベロッパー事業」、カード・銀行などの「総合金融事業」のほか「国際事業」「サービス・専門店事業」のセグメントで業績を発表している。

 主要セグメントごとの業績を見ていくと、主力のGMS事業の営業収益は同0.7%減の3兆 2690 億円、営業利益は140 億円(前期は20億円の赤字)だった。トップラインの伸びが期待できない中で、GMS事業はEC拡大を図りつつ、収益構造改善に軸足を置いている。23年2月期においては、品揃え拡充のほか受発注オペレーションの見直しによる在庫回転率向上、SKU見直しにより粗利益率が改善し、黒字転換を果たした。

 続いてSM事業の営業収益は、同4.8%増の2兆6421億円、営業利益は同25.2%減の228 億円の増収減益。フジ(愛媛県)の合併効果により増収となったものの、食品の仕入れ価格、水道光熱費の高騰などが足を引っ張り減益に終わった。

 ウエルシアホールディングスを中核とするヘルス&ウエルネス事業の営業収益は、同11.5%増の1兆 1496億円、営業利益は同7.0%増の448億円と増収増益だった。既存店売上高は物販部門が同5.3%増、調剤部門が7.4%増といずれも好調に推移。物販では自宅療養者向け風邪薬など、調剤では併設店舗の増設および受診・処方枚数が順調に伸び、好業績に寄与した。物販では、コロナ収束に伴う化粧品購入増、インバウンド効果もこの先期待できる。

 意欲的なM&A(合併・買収)や新規出店も増収に寄与している。23年2月期は162店舗の「コクミン」のほか、「フレンチ(3店舗)」「ふく薬品(25店舗)」を子会社化。新規開業も140店舗と高水準で、ウエルシアホールディングス全体の店舗数は2763に達する。

ディベロッパー事業はコロナ前の水準に

 ディベロッパー事業の営業収益は、同20.9%増の4434 億円、営業利益は同16.4%増となる452億円で増収増益だった。ベトナムをはじめとするアセアンにおける事業が好調に推移。国内においても、「ジ・アウトレット北九州」「イオンモール土岐」などの新規出店に加え、12店舗をリニューアルするなど集客力の強化に努めた結果、23年2月の既存店売上高はコロナ前の超える水準まで回復している。

 総合金融事業の営業収益は同3.3%減の4568億円、営業利益は同2.4%減の603億円。減収減益に沈んだものの、国内のカードショッピング取扱高は過去最高を更新し、海外では過去最高益を記録。全セグメントで最大の営業利益を稼いでおり、イオンの全社業績のけん引役となっている。

 国際事業の営業収益は同20.7%増の 4974 億円、営業利益は同129.9%増の128億円となり増収増益で着地。外出機会の拡大により、イオンベトナムやイオンマレーシアなどアセアン地区の売上が好調に推移した。

 コロナ禍収束に伴い客足が回復し、ヘルス&ウエルネス事業・ディベロッパー事業、国際事業が増収増益を達成。基幹ビジネスのGMS事業は前期に若干及ばなかったものの3期ぶりに黒字転換している。

今後の課題は「収益性」

 イオンが同日に発表した2024年2月期の業績見通しは、営業収益が同3.1%増/2832億円増の9兆4000億円、営業利益が同4.9%増/同103億円増の2200億円、当期純利益が14.6%増/同32億円増の250億円となっている。営業利益はコロナ前を超え、過去最高を見込む。

 イオングループ最大の課題は、収益性の改善だ。売上高営業利益率は2.15%と、ライバルのセブン&アイ・ホールディングス(4.29%)と比べても大きく見劣りする。

 ブレイクスルーの一助になりそうなのがプライベートブランド(PB)の充実・強化だ。物価高が進み、食品の値上げが相次ぐ中、消費者の生活防衛意識が高まっている。イベント時などは思い切って消費を行う一方で、ふだんの食卓は安く抑えるという消費スタイルが広がっている。ほとんどの品目で価格を据え置いている「トップバリュ」をはじめとしたグループPBは、そうした“賢い消費者”の受け皿となっている。言い換えれば、PBへの期待値はかつてないほどに高まっている。

 一方で、正社員やパート従業員の賃上げによる人件費の戦略的積み増し、エネルギーコストの上昇など、2024年2月期はコストプッシュ要因が目白押しだ。イオングループでは、23年2月期に引き続き、24年2月期もデジタルシフト促進などによる生産性向上により、コスト抑制を図るとしている。