第1回 カスタマーサクセスとは「いい買物したなあ」と言わせること

鈴木 良介(こゆるぎ総合研究所)
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「いい買物」の重要性が
高まっている理由

 ではなぜ、この2021年というタイミングで「いい買い物したなあ」と思ってもらうためのカスタマーサクセスに注目が集まっているのか。大きく2つの理由がある。第一に「いいもの」に関するスペック向上や機能追加では、他社と差別化できなくなっているためだ。

 第二に、購入後に関係を継続するためのコストが下がっていることもある。製品自体がコネクテッドになったり、アプリを活用することで、購入後にお客さんとコミュニケーションをするコストが下がった。そのため「満足してもらうための介入を、購入後に行う」というプロセスがやりやすくなった。

 すると、いま支払ってもらっている範囲で十分な満足をしてもらい、「いい買い物したなあ」という思いとともに再契約・追加購買に進む、というプロセスを回そうという作戦を採れる。また、満足してもらえれば、他の人に対する推奨にもつながる。模式にすると下図のようになる。

カスタマーサクセスの図

 テレビや自動車のような耐久消費財だと「一周5年」のようにサイクルが長くなる。一方で、サイクルが短く後工程での真剣勝負を頻繁に行っている権化のような業態がサブスクリプションビジネスだ。「一周5年」だと、次の購入のことまでは考えられない気持ちもよく分かる。一方で、「一周1ヶ月」だと「おいおい、今月一度もログインしてなかったら、来月解約されるんじゃないの」といった危機感が高まり、満足してもらおうという強力な動機づけになる。

 これまでは購入・契約は「ゴール」だったかもしれないが、これからは「シード権の獲得」ぐらいに思っていたほうが良いのだろう。当該商材に関しては、お客さんに一番近い、一番良いポジションの中で、次の購入や契約の継続を目指す。このシード権争いがずっと続き、勝ち続けた事業者は、当該顧客からのLTVを最大化することができる。

 筆者はマーケティングの専門家ではなく、ただの「IT大好きおじさん」である。ITの活用によって提供しやすくなっている価値をどのように活かすのか、と考えたとき。マーケティング領域におけるカスタマーサクセスはとても相性が良いものであるように感じる。

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