位置情報ビッグデータのAIによる解析により、「人流」を分析するベンチャー企業がある。クロスロケーションズだ。同社はGPSをベースに位置情報を集め、消費者の実世界での行動を可視化する。本稿では、2021年10月1日、全国で緊急事態宣言、まん延防止措置の解除が見込まれていた1週間(9/24〜9/30)と解除後(10/1~10/7)の1週間で、主要9業種で人流がどう変化したか、2019年、2020年、2021年の各データを参考に振り返った。
データ提供:クロスロケーションズ株式会社
《文中の主要データ比較は、緊急事態宣言解除前後の2週間》*グラフデータは、業界ごとに全国2000箇所の店舗を無作為に算出し、テーマパークは全国30箇所より算出しています。
・生活必需品(コンビニ/スーパー/ドラッグストア)
・外食(ファミリーレストラン/ファーストフード)
・趣味嗜好(デパート/テーマパーク/家電量販店/ホームセンター)
生活必需品店の人流はどう変化する?コンビニで上昇
まずは、コンビニ、スーパー、ドラッグストアの生活必需品を販売する店舗の人流を分析してみよう。緊急事態宣言解除前後の2週間を比較する前に、コロナ禍以前とコロナ禍で客の動きがどう変わったか、2019年と2020年、20201年を比較したグラフを見ていきたい。
■全国コンビニエンスストアサンプリング
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顕著に表れたのはコンビニ業界で、新型コロナ感染拡大が本格化した20年3月下旬から、人流がガクンと落ちている。その後、徐々に回復するも、この1年7ヶ月、コロナ下による自粛の影響をもっとも受けたオフィス街や、繁華街での人出減少の影響は大きく、2021年10月7日時点で元に戻ってはいない。ただし、緊急事態宣言解除後、1週間の動きだけを抽出してみると、週平均では解除後、2.5%の上昇を見せた。今後、どの程度、人流が戻ってくるかを注目したい。
次に、コロナ禍で売り上げを伸ばした企業が多く存在する、スーパーマーケットはどうであったか。
■全国スーパーマーケットサンプリング
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2020年の初頭は好調な滑り出しだが、1回目の緊急事態宣が発令された2ヶ月程度はぐんと落ち込んでいる。その後、2020年に比べれば、2021年は全体に持ち直しているようだ。その上で、2021年緊急事態宣言解除前の1週間と、解除後の1週間の人流はほぼ横ばいだ。コロナ下でも好調なスーパー業界ならではの現象と言えるかもしれない。
次に、ドラッグストアだが、コンビニ、スーパーと比べても変動が激しいことがわかる。コロナ前の2019年と比べると、コロナ後の2020年3月頃から人流は大幅に減少した。
■全国ドラッグストアサンプリング
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緊急事態宣言解除前後の2週間については、昨年、2019年よりは伸びており、直近の解除前と解除後の1週間では+1.1%の増加が見られた。今後は、コロナ禍で人流が減った業界として、コロナ時代にどう対応していくのか気になるところだ。
外食業界、時短要請解除の影響は?
次に、外食業界だが、今回サンプリングしたのはファミリーレストランだ。時短営業や座席数が制限されるなど、数々の制約を受け、影響は甚大だが、10月1日以降、全国で段階的に時短要請が解除され、アルコールの提供が緩和されたことから、今後の回復が見込まれる。
ファミリーレストランは以下の通り。コロナ前の2019年と比べて2020年、2021年は最大で倍の来訪数の変化(人流の変化)が出ている。2020年の1回目の緊急事態宣言下と、2021年の年初における緊急事態宣言下での人流の変化は当然ながら顕著である。
■全国ファミリーレストランサンプリング
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緊急事態宣言解除を受けても、まだ客は2019年水準には戻ってきていないが、前週比+3%の上昇を見せた。今後、どこまで客入りは回復するのだろうか。
次にファーストフードだが、こちらも、業界全体としてはコロナの影響をダイレクトに受け、人流は減少した。
■全国ファーストフードサンプリング
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2020年の後半からは徐々に来訪者・人流を取り戻しつつあるようで、宣言解除前後の直近2週間の比較では、1.9%の増加が見られた。2年近くが経ち、withコロナ時代で客の行動様式が変化した中、各店はどのような戦略を描いているのだろうか。
「コロナ特需」に沸いた家電量販店、ホームセンターの人流の変化は?
最後に、趣味嗜好の要素が強い、デパート、テーマパーク、家電量販店、ホームセンターの人流を振り返っておきたい。
まずはデパートだが、20年に人流が大きく減少し、全国で200万人を下回った月も目立つ。2021年は回復傾向にあるが、2019年の水準までは程遠いといったところだろうか。
■全国デパート
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緊急事態宣言解除前後の直近2週間では、+4%の上昇を見せ、客足は順調に戻ってきているように見える。今後はコロナ前の客入りまで回復することはできるのだろうか。新たなマーケットの開発や今後の取り組みにも期待したい。
続いて、テーマパークだが、帝国データバンクの調査によると、遊園地・テーマパーク企業235社の収入高合計は、前年比9.7%減の9128億3100万円だ。うち、減収企業は116社で全体の49.4%が外出自粛の動きを受け、厳しい経営環境に置かれている。今年残り3ヶ月弱でどれだけ盛り返せるかどうか気になるところだ。
■全国テーマパーク遊園地サンプリング
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2020年における緊急事態宣言下では、恐ろしく低迷した人流も2021年に入り減少の度合いも緩やかで人流が平均化されている。2021年の緊急事態宣言明けの前後2週間では、人流は+5%上昇した。やはり、緊急事態宣言解除を受けて、開放的になった客が増えたと言えそうだ。
次に家電量販店。同業界は、「巣ごもり需要」の追い風を受け、増益を記録した企業も多い。ただし、どれだけの客が通販ではなくリアル店舗を訪れ購入したのかが気になる点だ。
■全国家電サンプリング
直近の前後2週間での人流は+0.9%と急激な変化までは見られないが、今後、実店舗に足を運ぶ客が増えるのか、それともネットでの購買が定着し、客足は戻ってこないのか、今後に注目したい。
最後に、ホームセンター。同業界も、家電量販店と同様、人流に大きな変化がない。むしろ、21年においては、19年よりも客が増えている月もあるくらいだ。巣ごもり需要や、休日の日曜大工DIY需要に支えられ、増益を記録した企業も存在する。
■全国ホームセンターサンプリング
宣言解除を受けても、人流はほぼ変化がなく、+1.2%。ホームセンターは、休業要請業種から外れたという経緯もあり、コロナ禍で生まれた特需をうまく利用した業界と言えそうだ。
9業種全てで人流が増加、ウィズコロナ時代が本格的に到来?
10月1日の緊急事態宣言解除を受けて、9つの業界全てで人流の増加を記録した。今後、第6波が訪れるかどうかは不明だが、ひとまずwithコロナ時代に向け動き出した、という恰好になった。今後、業界・業種によって人流がどう変動していくかは注目である。
*「全国9業種の業種別人流変化」は、クロスロケーションズ株式会社のWebサイトで毎日更新されています。【毎日更新 全国業種別人流データ無料公開中】のアイコンをクリックすると確認できます。
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