新型コロナウイルス(コロナ)感染拡大に伴う需要増によって、上期の連結営業収益は3867億3800万円(対前年同期比109.4%増)、営業利益169億1400万円(同204.0%)と、大躍進を遂げたライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長:以下、ライフ)。コロナ禍でライフが行ったさまざまな取り組みについて、岩崎高治社長は何を語ったのか。上期決算説明会での発言を抄録する。(談・文責:ダイヤモンド・チェーンストア編集部)
コロナへの初期対応で得た信頼感
2月の最終週から本格的にコロナが拡大し始め、2月27日に政府から、全国の小中学校・高校の休校が発表されました。その時に感じたことは「これはただごとではない」ということです。目先の売上だとか、短期的な業績だとか、そういうことはいったん横に置いてしっかり対応しなければ大変なことになる、そういう気持ちでした。
最初に実施したことは、チラシ配布の中止や総菜・ベーカリーのバラ販売の中止、営業時間の短縮です。閉店を早めることはもちろんですが、開店時間も9時から10時へずらしました。これは、パートとして働かれている方は主婦が多く、お子さんの学校が休校になったことで普段通り出勤することが難しくなった方が多かったためです。また、マスク着用や消毒の徹底、レジ周りの防御板の設置と並行して、「地域のお客様へ」と題したチラシを全店で配布、新聞広告としても一部地域では掲載しました。これは、できる限り滞在を短時間にしていただくことと、コロナ対策でご不便をおかけすることに対し、ご理解・ご協力を頂きたいという内容のものです。来店されるお客さまの安全はもちろん、従業員が安心して働ける環境をいかに作るかという課題への対応の一環でしたが、お客さまから「とても安心できた」という温かいお声を多数頂いたのには、こういった取り組みによるところも大きかったと考えています。
ライフがコロナ対策の基本方針としたのは、次の3つです。1つ目は、「安全安心が最優先」ということ。2つ目は、「地域のライフラインであり続ける」こと。3つ目は「迅速に、正確に、正直に情報公開をする」ということです。感染者が出ても正直に、いち早く情報公開をしたことでお客さまのライフに対する信頼感が高まり、それが結果として上期の業績につながったのではないかと考えています。
また、コロナで困窮している産地や取引先の支援や、コロナ禍で内定を取り消されてしまった方の採用も積極的に行いました。これらの取り組みは、現場の責任者が自発的に考え、行ってくれたことで、組織としてひとつ成長した証であると思っています。
変化する社会へどう対応するか
一方、コロナによって、消費者意識や社会が大きく変化しています。下期については、「守り」「攻め」「変化」の3つに分けてさまざまな取り組みをしていこうと考えています。「守り」の施策は、感染防止のための取り組みを引き続き強化することです。従業員から感染者が出たとき、保健所から問われたのは「濃厚接触者がいるかどうか」でした。つまり、休憩室や喫煙所でマスクを外してどのくらい接触していたか、ということです。休憩が終わったら休憩室には清掃を入れる、昼食の時にも濃厚接触者にならないように十分配慮するなどの対応は引き続き強化していかなくてはならないと考えています。
5つの「攻める」施策①「改装」「採用」「EC強化」
「攻め」については、「改装の積極化」「採用の強化」「ネットスーパーの強化」「キャッシュレス決済の推進」「BIO-RAL(ビオラル)の拡大」の5つを考えています。改装は、1店舗あたり1億円以上の改装を首都圏近畿で20店舗弱、それ以外にも、1億円以下の“ミニ改装”を必要に応じて行います。従来手を入れてこなかったところも含めて、下期で40億円を改装に投じる予定で、これは半期での投資額としては過去最高です。
採用についてですが、これまでライフだけでなく、どこのスーパーマーケットも人手不足に苦しんできた状況があったと思います。しかし、この3~9月は累計で8500人のパート・アルバイトの方を採用することができました。募集しても人が取れないと言っていたのが嘘のようで、前年に比べて20%多く採用できているだけでなく、退職者も7%減っています。今までは採用してもほぼ同じだけの方が辞めていってしまい、トータルでは人が増えない状況が続いていましたが、ここにきて人が増える流れに変わりました。下期も積極的に採用は進めるつもりです。下期に限って見ると、採用を増やすことで生産性は一時的に悪化しますが、これは来期以降絶対に必要なことで、投資の一環だと考えています。
ゲームチェンジが起こったのがネットスーパーです。コロナで初めてネットスーパーを使い始めたという人も多いですし、既に使っていた人からの注文も増えています。3~4月には殺到する注文に対応しきれず、お客さまにご迷惑をおかけしたこともありました。人員や配送体制の強化を急遽行って対応した結果、EC事業は上期平均で140%増となりました。ネットスーパー需要はしばらく続くと見ていますので、下期にも対応店舗を増やし、昨年から提携しているアマゾンの「Prime Now」の配送エリアを広げるとともに、キャパシティの強化を行いたいと考えております。EC強化によって、前期年間売上30億円のところ、通期で50億円、来期には100億円をめざします。
5つの「攻める」施策②「キャッシュレス」「ビオラル」
キャッシュレス決済の推進は、コロナによって現金のやりとりが敬遠される面もありますし、従業員を感染から守るためにも必要なことだと考えています。また、感染防止の観点から、特売日を設けてチラシを配布して、集中的に人を集めるという販促が難しくなりました。その代わりに、キャッシュレス還元で奉仕していこうという方針です。近々、「LaCuCa(ラクカ:ライフの自社電子マネー)」での決済を、アプリで行えるようにもする予定です。また、ライフのセミセルフレジはお客さまから高い評価を頂いています。まだセミセルフレジの導入が終わっていない店舗が90店ほどありますので、追加で15億円の投資を行って、今期末までに全店に導入を完了します。
「攻め」の最後はビオラル事業です。 ここ数年、お客さまの健康に対する意識が高まっていると感じており、ビオラルはそういった方々に向けたブランドです。16年に大阪に第1号店として、「靭(うつぼ)店」をオープンさせて依頼、確実に認知度は上昇してきていると感じています。下期の取り組みとしては、首都圏1号店のオープンや、特に健康志向のお客さまが多いと分析している既存の約40店舗を対象にビオラルコーナーを導入するなどがあります。健康を気にされるお客さまの需要を取り込み、他社との差別化につなげられればと考えています。
「変化」するライフと来期への準備
最後に「変化」についてですが、まず店舗営業の面では、営業時間をどんなに遅くても24時までにしました。また、1月2日は全店休業にしました。販促の面では、チラシや特売での集客に頼らない、EDLP(エブリデー・ロープライス)強化へのシフトがあります。働き方ももちろん変えています。本社でも既に会議を大幅削減したり、もちろんテレワークも導入したりしています。店舗での働き方も、教育を中心に変えていこうとしています。他にも、日配食品のAI発注も今導入していますが、今年度末までに全店で完了する見込みです。電子棚札のトライアルなども行っており、店舗の生産性向上につながる設備を積極的に導入していきます。
今年の下期以降、従来通り守ることはもちろん攻めること、変えること、これらについてどれだけ準備できるかということが大切だと考えています。来期以降、消費も厳しくなると思いますので、やれることをしっかりやっていく、それが重要です。