企業が生き残るのに必要な「自立して行動できる人」を採用するのが難しい理由
異端児がフツーの会社で歩むイバラの道
戦後の学校教育は、高度経済成長期下で活躍できるサラリーマンを育成するカリキュラムだった。大きなミスをしなければ企業の業績は伸びるのだから、与えられたハコに適応し、終身雇用で一生懸命頑張ることができる人材であれば、それでよかった。
しかし、少子化、高齢化、人口減少が同時進行する低成長や、一挙にデジタル化の波が押し寄せる時代にあっては、協調性を持ち、優秀に業務をこなす人たちが集まるだけでは勝ち抜けない。むしろ、業務やハコ自体に疑問を持ち、破壊し、再創造できるような人材が求められている。突き詰めていうなら、企業内起業家のような人材だ。
ただ、サラリーパーソンにとって、仲間と異なる考えを持ち動く、異端派には、イバラの道が待っている。上下左右の従業員同士との軋轢は必至だからだ。
けれども、昨日の延長線として、毎日同じことを繰り返していれば、その企業は確実に衰退の道を辿ることになる。企業内でも組織にぶら下がることなく、自立し、あわよくば新しい仲間を雇って食べさせていけるような気概が必要である。
「同業他社と同じことをするほうが、
違うことをするよりもリスクは大きい」
だからということなのだろう。多くの企業は、採用基準に「自立して行動できる人」という基準を掲げている。
成熟市場で同質飽和から抜け出したい企業が、異質のDNAを積極的に受け入れ、差別化を図っていきたいという意思表示の現れに見える。
ところが、実際に採用された人たちを見てみれば、その多くは、「偏差値の高い学校を出た個性のない普通の人」という旧態依然であることがままあることも事実だ。
担当者にすれば、「自立して行動できる人」を採るよりも、慣例主義に基づき、採用活動を進める方が無難と考えるためであろう。
花王(東京都/長谷部佳宏社長)の常磐文克元会長がおっしゃっていたように、「同業他社と同じことをするほうが、違うことをするよりも、リスクは大きい」ものである。
だとするならば、企業側も、従来とは、もっと大きく異なる採用・研修を含めた人事制度を開発し、「業務やハコに疑問を持つ」人材の出現を支援したいところではある。
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