イオンの“農耕民族的”M&Aによるドラッグストア経営統合劇、この先に待ち受けるのは?

いちよし経済研究所:柳平 孝 (いちよし経済研究所主任研究員)
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今こそ再認識したい資本政策の重要性

 イオンは、時間をコストに使う農耕民族的なM&Aを志向する企業であると筆者は認識している。しかも、農耕民族といっても、その時間軸は米・麦のような1年で刈り取る単年草ではなく、“桃栗3年柿8年”という長期スパンなのである。

 そして察するに“果報は寝て待て、代替わりも寝て待て”のスタンスなのであろう。過去の事例を見る限り、創業者の代替わりの際に、あるいはいったん、創業家ジュニアに経営を任せ、その結果を踏まえて次なるアクション(株式保有比率の引き上げ)に移っているように思われる。その先に待つのは、既存のグループ企業への経営統合である。

 また、イオンは保有株式の売却やグループからの離脱を許容しない企業ではないかと筆者は推察している(ただし、経営不振による売却はある。例:米国タルボット、タカキュー)。

 最近ではDCMホールデイングスがケーヨーを完全子会社化する際、イオンはケーヨー株式のTOBに応じる代わりにDCM株式を取得している。また、「ハックドラッグ」を展開していた旧CFSコーポレーションが07年10月にアインファーマシーズ(現アインホールディングス)との経営統合を発表した際、イオンは08年1月開催のCFS臨時株主総会におけるプロキシーファイト(委任状争奪戦)にて“鎮圧”、当該経営統合構想を白紙化させている(16年9月、CFSはウエルシアホールディングス傘下のウエルシア薬局に吸収合併)。

 こうした事例を参考にすると、過去・現在においてイオンと関係をもっていたDgS企業がいったん離脱できたとしても、アクティビスト保有の株式を買い取ることで、再び傘下に収められる可能性も示唆されよう。

 最後に、資本業務提携のメリット・デメリットについて触れたい。規模拡大にまい進する小売企業・創業トップにとって、イオンをはじめとする流通大手との提携は魅力的だったと聞く。曰く、豊富な出店案件の紹介や商品部スタッフの商品開発会議への参加、各種コンプライアンス対応のための人的サポートなど、自社の経営資源では対応しきれない課題の解決には有効であったと。まさに大手と提携するメリットであろう。

 一方、株式保有を許容することの重要性はかなり時間が経たないとわからないかもしれない。上場企業として資本政策の重要性をあらためて認識していだだきたいと思われる今日この頃である。

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いちよし経済研究所

柳平 孝 / いちよし経済研究所 主任研究員

1991年北海道大学経済学部卒、同年大和総研入社。小売業界アナリストとして、INGベアリング証券(現マッコーリーキャピタル証券)、日興シティグループ証券(現シティグループ証券)などを経て、2011年1月より現職。公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員

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