第124回 相次ぐフードホールの開業 日本で成功するためのカギとは
フードホールが持つ目的と機能とは
この技術革新の中で、SCに設置されるフードコートやフードホールに明確な区分けはない。事業者が独自に命名し運用している。しかし、重要かつ明確な違いがある。それは「目的と機能」である。
フードコートの営業は、SCが開店すれば始まり、SCが閉店すれば終了する。一方、フードホールはSCが夜8時に閉まっても営業は続く。要するに主たる集客施設の喫食ニーズを満たすものがフードコートであり、それ自体が集客する目的性を持つのがフードホールなのである。
ヨーロッパやオセアニアに行くと、街中に食材の購入や飲食を担う市場(マルシェ)が点在している。これらマルシェは市民の胃袋を満たすための場所として確立されたものであり、市民の生活に溶け込んでいる。一方、日本で新規に開発されたフードホールは残念な結果に終わるケースがままある。その原因は、ここを理解しないまま多額な投資をかけてしまうためだ。
フードホールの持つ目的と機能には、購買と喫食、その中間の3つがある。購買とは食材やデリカを買うことであり、喫食とはその場所で飲食すること。そして3つ目の機能である中間は、たとえば丸物の魚を買って半身を料理してもらってその場で食べ、残った半身を自宅に持ち帰って自分で料理して食べる――。要するに食事の場所がシームレスに広がっており、海外で肉・魚・野菜など食材を販売するフードホールが多いのはそのためだ。
日本のフードホールは、こういった食のシームレス化ではなく、飲食店を集積するフードコートの高級版と理解されてしまっている。食文化の違いに起因するところだろう。

フードホールに必要なのは「食文化の理解」
では、日本においてフードホールを成功させるためには何が必要か。それは前述のとおり、食文化を理解するしかない。なぜスペインでバルやタパスが生まれ発達したのか、なぜ台湾に夜市があるのか、なぜフランス料理は大皿料理でないのか。それぞれに歴史と文化がある。
日本の居酒屋文化では和洋中どんな料理も揃う。焼き鳥にピザにチヂミに餃子。ビールに日本酒にウィスキーにワイン。海外でそんなメニュー構成の飲食店を見たことはあるだろうか。そして、横丁文化、店と客、客と客、このコミュニティは、コト消費そのものである。
SC事業者には、その地域ならではの「食」のゾーンを作ることを期待したい。流行っているからとフードホールを作るのではなく、その地域の食文化を研究し、そこに受け入れられる食材、店舗、人材、運営形態、これらをマッチングさせるノウハウを十分に蓄積し、生かしていくことが必要だ。
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