第120回 ECの脅威は物販にあらず SCが直面する本当の脅威とは
いま必要なのは来店動機の再構築
ネット技術の進化は、ショッピングセンターや百貨店へ足を運ぶ動機を確実に弱めている。消費者が、金銭的コストと時間的コストを支払ってまで来店する意味を見いだせなければ、商業施設は選ばれない。
この構造をマイケル・E・ポーター氏の「5フォース分析」に照らして見ると、ECは同業他社としての「競合」ではなく、「代替品の脅威」と位置づけるのが妥当である(図表6)。

いまや市民生活における多くの行動が、ネットを介して完結する構造になっている。買物、旅行、金融、映像視聴、さらには人間関係までもがネット上で完結し、リアルな商業施設は「時間の奪い合い」という新たな競争軸に巻き込まれている。
つまり、ショッピングセンターや百貨店が直面しているのは、単なる業態間競争ではなく、「生活の全体構造における役割の再定義」だという認識が必要である。あらためて問うべきは、「リアルでなければ提供できない価値」とは何か、という点である。消費者が自宅で動画を視聴する時間を割いてまで訪れたいと感じるような“行く理由”を提供できなければ、ショッピングセンターや百貨店はネット社会の代替品に時間を奪われてしまう。
にもかかわらず、依然として「何が売れるか」「どう売るか」といった従来型の「マーケティング1.0」的発想から抜け出せていない施設も少なくない。もはや「売る場」ではなく、「来たくなる場」「体験したくなる場」へと進化することが、リアルな売場が生き残る唯一の道である。
商業施設の価値を再定義する「西山貴仁のショッピングセンター経営」 の新着記事
-
2025/12/01
第128回 少子高齢化時代におけるショッピングセンターのターゲット設定 -
2025/11/18
第127回 ショッピングセンターが「フロア収支」を採用しない理由 -
2025/10/31
第126回 SC運営の成否を決める顧客の滞在時間 “装置産業”としての役割とは何か -
2025/10/17
第125回 「駅ビル」が抱えるリスクを百貨店の歴史から考える -
2025/10/03
第124回 相次ぐフードホールの開業 日本で成功するためのカギとは -
2025/09/19
第123回 「営業時間統一」という常識打破に向け、SCに求められる対応とは
この連載の一覧はこちら [128記事]
関連記事ランキング
- 2025-11-07長野県内最大「イオンモール須坂」が開業! イオンスタイルでは非食品の“専門店化”に注力
- 2025-11-18第127回 ショッピングセンターが「フロア収支」を採用しない理由
- 2025-11-13知られざる四国の激戦地・愛媛県西条市 トライアル進出で環境急変か
- 2025-10-21実例に見る「危ない商業施設」の見分け方
- 2025-11-13イズミ、ハローズ、ダイレックス……中四国最大都市・広島市の視察の仕方
- 2025-11-09新潟県初の「そよら」がオープン イオンリテールの県下での存在感さらに大きく
- 2025-12-01第128回 少子高齢化時代におけるショッピングセンターのターゲット設定
- 2013-12-02年間2ケタ以上のNSCを開業!地域密着の商業集積めざす=イオンタウン 大門 淳 社長
- 2023-04-28第68回 増加する百貨店のショッピングセンター化は「一時しのぎ」に過ぎない理由
- 2025-04-04第111回 ショッピングセンターの減少と小型化が進む理由とは





前の記事


間違いだらけ!? お客が集まる地場野菜売場のつくり方 


