ブランド改革を転機に急成長する3COINS、人気の源泉は「鮮度ある商品戦略」
パル(大阪府/小路順一社長)が展開する雑貨ブランド「3COINS」(スリーコインズ)。今年30周年を迎える同事業は、迅速な対応力で顧客を飽きさせない商品戦略を軸に、売上を伸ばしている。絶妙な価格設定と付加価値の提供、さらにはブランド改革、新ジャンルの立ち上げで、新規顧客獲得に成功している。
500円払えばお釣りがくる
3COINSが誕生した30年前は、100円均一ショップが台頭し始めた時期に当たる。3COINSブランドディレクターの肥後俊樹氏は、「グループのファッションという強みを生かしながら、世の中に新しい提案ができないか。そんな発想のもと、新しい雑貨ブランドが生まれた」と話す。

3COINSは、ほかの100円均一雑貨からは満足を得られない層に対して、「500円払えばお釣りがくる」価格帯と、100円では得られない付加価値を提供することで、差別化に成功した。

近年は、300円商品に軸足を置きながらも、そのほかの価格帯の商品も積極的に投入している。肥後氏は、「商品開発が進むなかで、300円では販売できなくても、市場価値が高く低価格で取り扱いができる商品がたくさんあるのにそれを展開できないもどかしさを感じるようになった。そこで、300円の枠を外し、価格以上の価値を感じていただける商品なら提案してみようと考えた」と振り返る。
2015年から徐々に300円以上の価格帯の商品を扱い始めたところ、20年に発売した1500円の「ワイヤレスイヤホン」がヒット商品となった。現在の商品構成比では、300円商品の比率が全体の6割、それ以外の商品の比率が4割となっている。


3COINSの店舗数は、コロナ禍に重なる20年から数年で驚異的な伸びを見せた。19年2月期で193だった店舗数は、24年11月現在で約340へと増加した。急成長の要因について、3COINSブランド長の角屋悠太氏は、「コロナ禍における〝おうち需要〞が大きく影響した。キッチングッズや便利グッズといったアイテムが注目され、多くのお客さまに支持された」と話す。コロナ禍では、マスクや除菌スプレーなど、顧客に切実に求められる商品も即座に投入した。
ブランド改革で客層を見直し
同時期、ブランド改革を断行したことも売上増に大きく貢献したという。きっかけは、ターゲット層の見直しだった。
「19年ごろまでは、一方的に20代の女性客が多いことを想定して店舗の内装や商品開発を行っていた。しかし、あらためて顧客分析した結果、主な顧客層は30代から40代の女性だと判明した」(角屋氏)。
そこで、メーンターゲットを30〜40代の女性に据え、ターゲット層に合わせた商品や色みを再考した結果、より顧客ニーズをとらえた商品開発につながった。さらに、明るい緑色だったテーマカラーを、落ち着いた深みのあるグリーンに変更。床材や什器といった内装も、白を基調とするものから木目調やモルタル調の落ち着いた雰囲気の色みへと転換した。

「コロナ禍でのスピーディな対応とブランド改革が掛け合わされたことで、より大きな反応を生み出すことができた」と肥後氏は話す。重要な転換期を経て、3COINSは人々の生活に欠かせないブランドへと進化を遂げた。
躍進を支える商品開発の秘訣
コロナ禍が終息した現在でも、3COINSの躍進は続いている。その要因は「商品の鮮度にある」と角屋氏は言う。3COINSの1店舗当たりのアイテム数は約3000点に上る。カテゴリーも、アクセサリーからキッチン、インテリア、モバイルアイテムまで幅広く展開しており、大型店舗では食品といった新規カテゴリーの拡充も進めている。
季節物商品やコラボ商品などの「企画」と呼ばれるカテゴリーも重視している。驚くべきことに、定番アイテムは売上比率の約半分で、毎週投入される新商品は月間で約700SKUにもなる。
角屋氏は、「いつも発見がある店づくり、お客さまを飽きさせない商品展開は、ブランド立ち上げ時からの戦略としてブレずに貫いている。これが3COINSの強みであり、売上増の大きな要因となっている」と分析する。
同社の特徴の1つとして、商品開発におけるバイヤーの自由度の高さが挙げられる。肥後氏は、「カテゴリーごとに担当バイヤーがおり、それぞれが自ら実現したいことを基軸に年間計画を立てている。このため、バイヤーの一消費者としての『こんな商品があったらいい』という思いが商品に反映され、お客さまのリアルな需要に応える商品企画につながっている」と説明する。
各バイヤーの熱意とそれを実現する仕組みが、スピード感ある新商品投入を可能にし、加速度的な成長の源泉となっているようだ。
続きをご覧いただく場合、ダイヤモンド・ホームセンター12月15日号をご購読ください。