数字で見るプロ市場の可能性、6兆円市場の勝者はだれか?

高浦佑介 (ダイヤモンド・ホームセンター編集長)
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ホームセンターの躍進、新規参入相次ぐ

 3つの勢力の中で最も勢いがあるのはHCを母体とするプロショップだ。

 業界をリードするのはコーナン商事(大阪府)で、プロショップ「コーナンPRO」を01年に開業。職人の生活・購買行動を徹底研究し、それを売場づくりや商品政策に反映させた。建築資材も含め、工具・金物・作業用品など総合的な品揃えをしたプロショップで、同業他社に先駆けて新規市場の開拓を進めてきた。19年6月には会員制卸売業の建デポ(東京都)を買収。プロ事業を合わせると、24年2月期末に店舗数が210店舗、売上高は約1300億円となる。

 コーナン商事に続くのがDCMホールディングス(東京都)傘下のホダカ(東京都)だ。08年8月に愛知県からスタートしたホダカは、店舗面積300坪を標準フォーマットとし、工具・金物・作業用品の専門店として職人の支持を集める。24年2月期には店舗数が63店舗、売上高が230億円となった。

 この2社がHC系プロショップをけん引するなか、20年前後には多くのHC企業がプロ事業に本格参入し始めた。カインズ(埼玉県)、コメリ(新潟県)、アークランズ(新潟県)、ジョイフル本田(茨城県)、アレンザホールディングス(福島県)など大手

 HCのほとんどがプロ事業強化の方針を打ち出している。HCはフォーマット誕生から50年以上がたち、市場規模は約4兆円で20年近く伸び悩みが続いてきた。新たなマーケットとしてプロ市場のシェア獲得をねらう。

住設・建材の専門商社も動く

 2つ目の勢力は住設・建材専門商社だ。もともと住宅メーカーや大手工務店など法人を主な顧客としてきた。しかし、建設市場の環境変化に合わせて、一人親方や多能工までターゲットを広げてきている。富士経済グループによると、25年の市場規模(予測)は住設が約2兆7700億円、建材が約2兆円で合計4兆7500億円となる。

 業界大手の渡辺パイプ(東京都)は管材の専門商社からスタートし、住設機器、電材へと取扱カテゴリーを拡大。全国に約580の営業所があり、現場に30〜60分で資材を配達できるスピードが特徴だ。新規顧客獲得を得意としており、顧客は毎年1万社以上増えている。元請けと施工店の顧客同士をマッチングする「セディア・コネクト」サービスや、ハウスメーカー・建築業者向けに設備設計サービスを提供するなど、物販以外の新規事業にも積極的である。住設・建材専門商社の中でも業績の伸び率がトップクラスで、24年3月期の売上高は4100億円を突破し、業界最大手となる見込みだ。

 小売事業に進出する企業も見られる。

 住設機器専門商社の小泉(東京都)は小売事業としてプロショップ「プロストック」を展開する。プロストックは03年に1号店「プロストック仙台南店」(宮城県仙台市)をオープン。その後、首都圏を中心に店舗網を拡大し、24年5月末時点で25店舗を展開する。同事業の特徴は、管材、空調部材、電材、住設機器などのカテゴリーの専門性の高い品揃えだ。小泉の営業所を補完する役割を担っており、今後は首都圏30店舗体制、さらに営業所のある地方にも進出する方針だ。

 そのほか、工具・金物専門商社の島袋(沖縄県)は工具・金物専門店「シマコーポレーション」を展開。1995年に小売事業に新規参入し、1号店「シマコーポレーション門真店」(大阪府門真市)をオープン。それ以来、2〜3年に1店舗のペースで新規出店し、現在は大阪府、京都府、兵庫県で11店舗を展開する。

プロ市場を取り巻く環境の変化

6兆円市場の勝者はだれか?

 第3の勢力はEC事業である。建設業者をターゲットにしたECは現状、MonotaRo(大阪府)の「モノタロウ」により独占されていると言っても過言ではない。同社の23年12月期売上高は2542億円で、そのうち「建設業・工事業」の割合が約2割。つまり建設業者向けに約500億円を売り上げている。

 この牙城(がじょう)を崩すべく、「DIY Factory」を運営する大都(大阪府)はBtoBに特化したECプラットフォーム「トラノテ」を23年2月に開設。渡辺パイプは今年4月からEC「シザいもん」をスタートさせた。HC企業もカインズやコメリなど、EC事業でプロ顧客の拡大をねらっている。

 プロ市場は金物店、HC系プロショップ、住設・建材専門商社、建設業者向けECの4大プレーヤーの市場規模を合計すると約6兆円のポテンシャルを持つ。今なお、個人経営の金物店は減り続け、一人親方や多能工は増え、買い場に困っている。また、住設・建材の専門商社最大手が売上高4000億円、小売業最大手が約1300億円で、まだまだ寡占化されていない。

 今は変革の過渡期で、群雄割拠の時代である。建築職人から信頼されるようになるには時間がかかるし、簡単ではない。しかし、今アクセルを踏んで、建築職人の信頼を勝ち取ったプレーヤーが将来生き残っていくはずだ。

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記事執筆者

高浦佑介 / ダイヤモンド・ホームセンター編集長

2010年東京大学文学部卒業、12年同大学院修士課程(社会心理学)修了。14年ダイヤモンド・リテイルメディア入社。『ダイヤモンド・チェーンストア』誌の編集・記者を経て、19年4月よりダイヤモンド・ホームセンター誌編集長。ホームセンター業界のトレンドに精通しており、TV・ラジオなど数々のメディアに出演するほか、ダイヤモンド・リテイルメディアYoutubeでも業界解説動画を配信している。

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