万引きロス対策も、DX人材育成も「共創」の時代!小売業の連帯つくるチームK.Oの成果とは
非効率な産業を改革する
商品マスター問題を解決する!
「商品情報」のセッションテーマは「本音で議論!なぜ業界で商品マスターの標準化が進まないのか」。
商品マスターとは、JANコードや商品名、内容量、商品パッケージ画像など、小売業が店舗やECで扱っている商品情報をデータにまとめたものだ。
商品マスターには「取引に関わる情報」と「お客のために開示すべき情報」の2つが含まれる。2つを明確に分けることを前提としたうえで、前者は競争領域、後者は協調領域として後者を共通利用すべきだとチームK.Oは説く。
小売企業別に商品マスターを作成することが、どのような弊害や非効率をメーカー・卸・小売に与えているのか。商品パッケージ画像を例に考えていきたい。
商品パッケージ画像は、同じ商品パッケージを撮影するので、微妙な撮影角度の違いこそあれ、ほぼ一緒だ。だが小売業は「独自のデータ」であることに固執し、メーカーに画像データ作成を要請する。そのためメーカーでは各社の求めに応じて都度撮影、納品する必要がある。
では、苦労して各社ごとに画像データをつくったからと言って、アマゾンなどのEC専業と比べてコンテンツが充実しているかといえばそんなことはない。むしろ貧相だ。アマゾンは原材料やアレルゲン表記などの裏面情報も含まれるが、SM各社の画像データはほぼパッケージ画像のみだ。かけた労力が、まったく価値へと転換されていないのだ。
それならば、小売で共通化しリッチコンテンツ化を図ったほうが、消費者、メーカー・卸、小売にもメリットが大きいというのがチームK.Oの主張だ。
登壇したMizkanの吉永智征社長は「小売各社向けにカスタマイズする必要があり、膨大な人件費がかかっており、これを価格に転嫁している。(このムダがなくなり)適正価格で(お客に)ご提供できたらいい」と語る。
卸からは国分グループ本社の品田文隆常務執行役員が登壇。「一部小売企業では競合他社より一歩でも早く商品情報を入手すべしとして、『競争領域』にしているところがある」と指摘、お客のための情報と、取引に関する情報を切り分け、後者については小売業主導でガイドラインを見直すべきだと説明した。
これを受けて小売業の観点からは、U.S.M.Hの山本慎一郎副社長が「小売はなんでもタダでもやってもらおうという根性があったが、ようやくカネがかかるということを理解するようになった。今後、取引条件も変わってくるとなれば、一生懸命取り組むように変わると思う」と説明した。
ここで、そもそもなぜ商品マスターの統一が必要かを説明したい。
働き手の高齢化と減少が進むなか、産業効率を高めるためロボットの活用が想定されている。だが、商品棚の在庫状況の確認や補充でロボットを使おうにも、商品情報や画像が統一されていなければ、結局非効率なままだ。だから、商品マスター問題を解決することが重要なのだ。
それに関して、今後の統一の方向性についてはGS1 Japan(流通システム開発センター)の森修子理事がタイムスケジュールを含めて説明。最後に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の赤羽根亮子氏が「小売業界の課題解決のカギとなる商品情報データベースの研究開発」について、撮像装置とロボットの研究開発の最先端などについて解説した。
1回の情報入力であらゆる企業が活用可能な、シングル・インプット、マルチ・アウトプットが実現できれば、小売産業のムリ・ムラ・ムダを減らすことができる。製配販が効率化され、等しく利益を享受できれば、それが取引条件の改善と消費者利益につながることに、小売側は早く気付くべきであろう。