万引きロス対策も、DX人材育成も「共創」の時代!小売業の連帯つくるチームK.Oの成果とは
昭和マインドはびこる古い業界
働き方、学び方を変える新しい人材育成とは
まず最初に行われたのが、Manpowerの分野。「昭和マインドをぶっ壊す!これからの小売業の働き方、学び方を考える」を旗印に行われた。
ゼクシィ産みの親で、大手企業向け新規事業開発コンサルティングを手掛けるアーレア代表の渡瀬ひろみ氏、イオン九州の柴田祐司社長、ライフコーポレーション営業戦略本部長の田岡庸次郎氏がゲストとして登壇した。
冒頭では、就職不人気度や「知り合いや若い世代、家族友人に職場としてお勧めするか?」というアンケートの残念な結果が発表された。
その背景として、「生産性の低さ」とそれゆえ「給料を上げられない」ことがあるとチームK.Oでは規定。どうすれば生産性を上げられるか、そして給料を上げ、働きたくなる魅力的な産業にできるかが話し合われた。
セミナーで槍玉に挙げたのが「チェーンストアというビジネスモデル」だ。①規格に当てはめる新人教育、②尖った人材を許さずできるだけ中庸であることを求める評価・処遇システム、③他者との交流が少ない環境と情報の閉鎖性の3つがその結果として生まれたと主張する。
それでも経済と産業が右肩上がりで成長していた昭和時代は、成功パターンさえ構築できれば、それを横展開することで全員が「売上を上げる」という小売業の醍醐味が実感でき、企業も成長し、働いている人にとっても魅力的な産業だった。
しかし、店数が増えて競合は激化し、商圏も狭まり、個店ごとの要件が業績要因の大部分を占めるようになると、1つの事例を横展開することでは成功は得られにくくなっていった。
そうしたなかでチームK.Oでは「生産性が高く働く人がワクワクするモデルに」するため、①脱ロボット化の人材育成、②副業も可能にし、成果と報酬の関係性の見直し、③社内外ネットワーク構築を促す仕組みや環境づくりを提案した。
この提案について渡瀬氏は「食の安全を守る小売業は、鉄道会社と同様、『オペレーションエクセレンス』が求められる業界。人材育成においても、ルール遵守に集中する人を育成するあまり、『思考停止』になる恐れがある」と指摘。
「ただし、全員がクリエイティブである必要はない。全従業員のうち1%の人でもよいので、創造的破壊ができる人のために実験店舗をつくり、チャレンジさせることが重要。その際失敗を許容することが最も大事だ」と説明した。
イオン九州の柴田社長は「巨大組織であるイオンでは(一つの社会ともいえる)『イオン村』ができている。そのイオン村からどうやって外に出てもらうかを率先してやらせている」と自立的な人材を増やし、オープンな視点で企業の新たな成長に目を向けられる人材育成に注力していることを説明した。
ライフの田岡氏は「90年代までは大店法があり、休日も営業時間も規制されていた反面、従業員同士が顔を合わせコミュニケーションを取る機会も多かった。大店立地法施行により店舗の営業時間や休日が自由化され、小売企業にとって急成長のきっかけとなった一方で、24時間営業店舗なども増え、従業員同士のコミュニケーションが減少していったのではないか。部長クラスの管理職は昭和マインドのままで、現場の変化に合わせて(仕組みやコミュニケーションのあり方を)変えきれなかった部分があるのでは」と語り、柴田社長も「当時組合にいたが、法律変更により正月休みがどんどん短くなるなかで、組合としてどう変えていけばいいかまで考えは及んでいなかった」と同調した。
その上で柴田氏は「(流通第一世代と言われる)大手小売の創業者たちは定期的に会い、意見交換し、業界をどうやって良くするかを話し合ってきた」と指摘、企業という視点ではなく、その上のレイヤーである「産業」という視座を持つことの重要性を指摘した。
昭和マインドを令和マインドに変える1つの成功体験として、イオンDXラボの事例が共有された。社内外のデジタル化に関する取り組みや考え方を共有し、「自分事化」する場として、いまやグループ4000~5000人が参加する大イベントだ。
その大きな課題は、店舗で働くスタッフやミドル世代の参加が少なかった点だ。理由は、現場の人にとっては参加する時間がない、ミドル世代にとっては「理解できなくてついていけなかったら恥ずかしい」というものだった。
そこで、時間がない人でも参加できるように30分程度の勉強会を新たに立ち上げた。内容も、初参加の人でもわかるように平易なものにするよう心がけた結果、今では400人程度が参加し、うち80%以上が40代以上となったという。
北村氏は「これをイオンだけでやるのはもったいない。業界全体で、学べる場をつくっていきたい」と語り、セッションをまとめた。