万引きロス対策も、DX人材育成も「共創」の時代!小売業の連帯つくるチームK.Oの成果とは

2024/04/08 05:59
ダイヤモンド・チェーンストア編集長:阿部 幸治 (ダイヤモンド・チェーンストア編集長)
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3月15日、リテールテックの会場である講演が行われた。2時間強の講演時間で登壇者は20名近く!有力小売業やメーカー・卸のトップ、幹部など豪華メンバーがゲストとして参加するセミナーにはオンライン参加も含めて数百人が集まった。それがチームK.Oによる「今、会社の垣根を超えて、協調して取り組もう!!~セルフレジ商品ロス対策、DX人材育成、共通商品マスター、SDGs等の課題の整理と事例研究~」と題したセミナーだ。
企業の枠を超え、小売業界をより魅力的で持続的に成長ができ、働きたいと思える産業にすることを目的に、「共創」と「連帯、そして「具体的な行動」を促す「チームK.O」が呼びかける世界へとお連れしよう。

チームK.O
チームK.Oのメンバーたち

デフレからインフレに変わり
豊かさを維持できなくなった!

 「チームK.O」とは何か、その具体的な目的やこれまでの行動については「有力小売から続々参加!生成AIに防犯、小売企業の垣根超え協調を実践する「チームK.O」とは」を読んでほしい。

 チームK.Oの中心メンバーを4人紹介すると、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)経営企画部長の北村智宏氏 、ライフコーポレーション(ライフ)営業戦略本部兼IT戦略部部長の尾崎健氏、パナソニックコネクト エグゼクティブ インダストリーストラテジストの大島誠(マック大島)氏、そして日本マイクロソフト インダストリーテックストラテジスト岡田義史 氏だ。

 このほか企業の枠、業界の枠を超えたスペシャリスト、ゼネラリストたちがすでに総勢20名ほどがチームK.Oに参加している。

 セミナー冒頭では、「チームK.Oが目指す世界」が共有された。

 まずはチームK.Oが掲げる問題点から説明したい。

 小売市場規模は1992年、日本は約129兆円、米国は約123兆円でわずかながら日本が上回っていた。

 しかし、30年経ったいまはどうだろう。米国は約635兆円まで拡大した一方で、日本は約123兆円とむしろ微減している。日米小売市場規模はもはや比較対象にならないほど広がってしまったのだ。

 その要因は、経済成長の指標であるCPI(消費者物価指数)から導くことができる。93年をともに100とすると、米国は202.5となった一方で日本はわずか107.5なのだ。

 米国で物価が倍になったということは、それに合わせ所得も同様のペースで上昇しているはずだ。一方日本は、物価が30年で7.5%しか上がっていないのと同様に、給与もその程度しか上がっていないことが推察できる。

 平成の30年間、日本は経済成長ができない代わりにコスト削減で物価上昇を抑えたのだ。

 とくに小売業による徹底的なコスト削減と売価引き下げ、低価格競争が大きな役割を果たした。だからわれわれは給与が上がらなくても豊かな暮らしを享受できたとも言える。

 しかし令和になり、デフレからインフレへと変わった。

 インフレは一般的に給与を押し上げる働きを持つものの、賃金上昇は実質的な物価上昇を大きく下回る状況が続いているし、企業も利益を上げられなければ、その利潤の分配として給与を引き上げることはできない。特に生産性が低く収益性が低い代表産業である小売業界にとっては都合が悪い。

共創でイノベーションを創出する

 ますます魅力のない産業となり、優秀な人材が来なくなり、結果イノベーションが起こらないという、負のスパイラルに陥る危険があるからだ。

 そこで、自社だけでは完遂できないことを共通課題として、業界全体で「共創」することで解決し、ひいてはイノベーションを創出していこうというのがチームK.Oの基本的な考え方だ。

 チームK.Oがめざす領域は大きく以下の4つ。

 Technology:「デジタルの恩恵をすべての人に」を旗印に、商品データ標準化と産業横断レジストリー構想を掲げる

 Ecology:「次の時代のためにより良く」を掲げ、有価物と産業廃棄物の共同回収モデルを進める

 Anshin&Anzen:「地域とお客様と従業員を護る」ためにセルフレジの商品ロス対策に取り組む

 Manpower:「若者が働きたくなる業界へ」転換するために、小売業界に根強く残る「昭和マインド」を破壊し、これからの小売業の働き方、学び方を教える

 セミナーでは、この4分野ごとに30分ずつ時間を使い、各活動の課題とねらい、成果、ゲストを呼んで今後取り組むべきことへのコミットなどが行われた。具体的には、Manpowerは「人材育成」、Ecologyは「環境」、Technologyは「商品情報」、Anshin & Anzenは「レジ商品ロス防止」をテーマとするセッションで、このうち本稿では「人材育成」「商品情報」「レジ商品ロス防止」を中心にまとめた。

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ダイヤモンド・チェーンストア編集長

阿部 幸治 / ダイヤモンド・チェーンストア編集長

マーケティング会社で商品リニューアルプランを担当後、現ダイヤモンド・リテイルメディア入社。2011年よりダイヤモンド・ホームセンター編集長。18年よりダイヤモンド・チェーンストア編集長(現任)。19年よりダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長を兼務。マーケティング、海外情報、業態別の戦略等に精通。座右の銘は「初めて見た小売店は、取材依頼する」。マサチューセッツ州立大学経営管理修士(MBA)。趣味はNBA鑑賞と筋トレ

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