鳥貴族が”社名変更”で見据えるビジネスモデルのソフトな転換と世界進出とは
鳥貴族ホールディングス(以下、鳥貴族HD)の2024年7月期決算は、コロナ後の回復を示す数字となった。売上高は334億4900万円(前年同期比64.9%増)、営業利益は14億1700万円の黒字。ともに想定を上回る結果での増収増益となった。経常利益は時短要請協力金の反動で前期比27.4%減の14億2900万円だった。2024年7月期は通期で売上高399億6400万円、営業利益18億6100万円を想定。コロナ前の水準に戻し、コロナ禍による失速からの脱却へ加速する。
回復基調の前に転がる障害
鳥貴族HDの業績について、このまま上昇曲線をキープすることは堅そうだが、視線の先にはいくつかの障害が転がる。大きいのは原材料費の高騰だ。円安やエネルギー資源の価格上昇も大きな負担となる。これまで経営努力で価格を抑えてきた同社だが、もはややれることはかなり限定的な状況といえる。
そもそも快調に拡大を続けてきた鳥貴族HDの業績にブレーキをかけたのは、経営問題というよりもコロナといういわば”災厄”が原因。だからこそ、同社はその間も経営努力でマイナスを最小限に抑えてきた。だが、急速なインフレにより、いよいよ格安でウマい居酒屋として急成長したビジネスモデルの転換も視野に入れざる得ない状況だ。
実際、同社はこの2年で20円の値上げを敢行。コスト上昇分を吸収している。顧客の側も不満の声を上げるというより、仕方ないというムードだが、そもそも居酒屋を利用する客が減少傾向にある。これまで同社の拡大の原動力となっていた新規顧客を引き寄せる材料が徐々に乏しくなりつつある。
大手居酒屋チェーンの「やきとり大吉」(ダイキチシステム)と融合し、苦境の居酒屋業態の最大手として、業界全体の復調をけん引することに期待もかかるが、同社はいままさに大きなターニングポイントを迎えている。