経営学者・楠木建氏も絶賛!店舗当たり年商約27億円を稼ぐ 「クックマート」の競争戦略
食品スーパー業界は
複雑性の高い「ナマモノ」
著者の白井健太郎社長は、創業者の白井正樹氏から経営を引き継いだ2代目社長だ。もとはインターネット広告、キャラクタービジネスなどに携わっていたいう異色の経歴の持ち主である。
本書では、そんな白井社長が自身を「人生の厄介息子」と呼び、紆余曲折を経て現在の経営に至った歩みを赤裸々に語っており、自分らしく働きたい「悩めるビジネスパーソン」にとっても示唆の多い内容となっている。
特筆したいのは、食品スーパーに携わっていなかった白井社長だからこその視点や業界で感じた違和感が、クックマートの戦略の起点、ユニークな施策へとつながっている点だ。
たとえば、食品スーパー業界は他業態に比べて寡占化が進んでいない。この理由を白井社長は、食品スーパー業界が持つ下記の特性が要因にあるという。
■売上高構成比の過半が生鮮食品というナマモノである
■生鮮食品というナマモノはローカル性を強くはらむ
■それを扱う人(人材)も客もまたナマモノである
このように食品スーパーの経営は、3つの「ナマモノ」と呼べるような複雑性の高い要素を持つものであり、(書籍内ではこの特性を「魔境」というあえて特殊な言葉を使って説明している)、そのため、標準化、効率化によって規模拡大をめざすチェーンストア理論だけでは限界があり、クックマートはそれとは異なる道に成長の可能性を見い出している。
会社はコミュニティ
地域の人を活かす!
こうした考えから生まれた、クックマートならではの特徴の1つにユニークな組織戦略がある。ロールスーパーで働くのは地域で生活する「ローカルの普通の人々」だ。その特性も「ナマモノ」と捉えて尊重し、そんな人達が生き生きと活躍できる人事モデルを構築・実践している。
たとえば、望まないのであれば無理に昇進をめざす必要はなし。従業員がそれぞれ自身にフィットする場所で働けることをめざした「己を知り組織を知るための人事制度」をはじめ、会社自体がコミュニティそのものとなっていることを象徴する「家族バーベキュー会」「ユルい部活動・同好会」など、クックマートならではの制度の数々も興味深い。
これらは今後、地方人材が減り、魅力的な組織となり人材を獲得していくことが食品小売業界でも求められるなか、さまざまな視点を与えてくれる。