年商4億円の焼肉店が打つ、大不況時代の対策と勝ち筋とは?
3億円の融資で攻めに出る!
ゼロゼロ融資では3億円を借り入れて設備を拡充し、攻めに出た。主な設備投資は①ラピッドフリーザーや真空スキンパックといった最新冷凍機器、周辺機器の導入、②肉の写真撮影や動画撮影を行う撮影スタジオの新設、③新たな加工場の新設、そして④発送作業場の新設だ。
こうして、コロナ前に月商約400万円だった通販事業を現在は月商1000万円、繁忙期には1800万円を稼ぎ出す柱の一つに成長させた。また社内のデジタル事業部主導で、ホームページの随時改良に加え、Twitter、TikTokも連動させて、話題をつくるなど、常に仕掛けている。
さらに既存店の隣にあった宴会場をラーメン店に転換。「以前は団体客を入れていたのですがコロナ禍で夜の営業が不調になったため、昼に集客できて冷凍でも売れる商材のラーメン店にしました」と、夜から昼に集客する店へとシフトさせた。
大不況時代に利用しやすい店づくり
こうした中、古川氏が21年12月に出店したのが1階は精肉・小売店、2階はイートインの「タクミートストア」だ。特に注目したい2階のイートインは徹底したセルフサービスを導入。カトラリーやトングといった必要なものは席に備え付けた引き出しの中からお客自身が取り、水や取り皿もセルフサービス、オーダーはタッチパネルにして会計はセルフレジにした。
1階に常駐するスタッフは1Fで販売する総菜作りや仕込み、精肉のカット作業の間に、注文が通ったら2Fに料理を運ぶだけ、というオペレーションで人件費を徹底的に抑え、その分、料理をグループ最安値で提供する。
「まだ知名度がなく、売上もそこそこですが、この店が真価を発揮するのは今から。23年の前半は、さらなる不景気や原価高騰の煽りから飲食店の閉店ラッシュが来ると予想しています。そうすると不安感が世の中に蔓延し、消費者も財布の紐を締めます。その対策として最安値の店を作りました」と古川氏は話す。
肉の品質は、平均客単価が5000円前後の他姉妹店と同じく、自社牧場の「おおいた和牛」を提供。姉妹店よりも単品料理が少ないだけで、匠グループの看板料理「大判炙り寿司」も同店舗のみ数%安い価格に設定する。
現在、1階の小売と2階のイートインの売上比は半々を目指しているという古川氏。2022年12月の繁忙期の売上は小売が330万円、イートインが270万円。2023年3月からはメニューを見直し、肉1切れ50gを250円〜、現在4990円〜の盛り合わせを2990円〜にしてバリエーションを広げるなど、より安くなる店づくりを行う予定。イートインだけで月商400万円を目指す。
実際に体験してみたところ、接客もいい感じにほったらかしで、特段気にならない。何よりも平均客単価が2000円〜3000円なのだから、消費者にとっては魅力的である。
また、2階のイートインへ行くためには、1階を必ず通るわけだが、そこで並ぶ精肉、総菜、冷凍肉、冷凍総菜各種が「家族への手土産」や「明日のおかずの一品」「自分の休日用に冷凍総菜を」など、多目的な“ついで買い”を誘導する仕組みとなっている。