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オイシックス、売上1000億円、当期純利益50億円を突破!低価格帯を強化するしたたかな理由

オイシックス・ラ・大地(東京都/髙島宏平社長、以下オイシックス)は5月13日、2021年3月期決算説明会を行った。コロナ禍で特需ともいえる恩恵を受けた同社の通期決算は増収増益、目標としていた売上高1000億円を一年前倒して達成する形となった。

主力事業以外も軒並み好調

 オイシックスの21年3月期決算は、売上高1000億6100万円(対前年同期比40.9%増)、営業利益74億6500万円(同202.6%%増)、純利益50億3100万円(同536.7%増)と大幅な増収増益での着地となった。また、同社が重要指標としているEBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)は89億200万円で、同147.6%増だった。

 四半期を振り返ってみると、第1四半期では主力サービスのオイシックスが殺到した注文に対応しきれず、新規会員受付を一旦中止せざるを得なかったが、第2四半期では配送センターを急遽拡張し順調に会員数を増加。結果、オイシックス、大地を守る会、らでぃっしゅぼーやの主要3ブランド合わせて、約8万人の会員数純増となった。またARPU(1ユーザーあたりの平均売上金額)も、コロナの影響が強かった第1四半期をピークに段階的に落ち着きつつあるもののその後も好調に推移、前年比事業平均で約15%の増加となった。

 セグメント別の業績では、オイシックスが売上高498億6000万円(同39%増)、大地を守る会が139億7000万円(同33%増)、らでぃっしゅぼーやが177億円(同18%増)。とくに、19年4月に子会社化したヴィーガン向けミールキット宅配を行うアメリカの「パープルキャロット(Purpe Carrot)」、食品スーパー(SM)と提携して移動販売を行う「とくし丸」事業などを含むその他事業の売上高が189億2000万円(同99%増)と大きく伸長した。パープルキャロットの黒字化による影響も大きいとみられるが、オイシックスがそれぞれ協業する、三越伊勢丹ホールディングス(東京都/細谷敏幸社長)が行う宅配事業「ISETAN DOOR」、NTTドコモ(東京都/井伊基之社長)の会員向けのミールキット宅配サービス「dミールキット」がそれぞれ好調なことも要因のひとつ。とくに「ISETAN DOOR」ではサービス開始から約3年で会員数約4万人と、大地を守る会と同規模のサービスにまで今期成長をみせた。

21年3月期の注力施策

 21年3月期の事業別注力施策についてみていくと、まずオイシックスでは、コロナ禍で注文が殺到し逼迫した出荷キャパシティをコントロールするため、従来のミールキット宅配コースと比べ、少ないSKUで人気商品を手軽に注文できる「サクッと!Oisix」コースを新設。苦肉の策で立ち上げたサービスだったがこれが意外にもヒットし、会員数の伸長に役立った。

 また、コロナ禍で苦慮する飲食店支援として始まった、人気店のメニューをキット化して届ける「おうちレストラン」も好評を集めラインアップを拡大して継続的に展開した。パープルキャロットのヴィーガン向けミールキットの国内展開も順調で、19年3月期と比較して約4倍まで販売数を伸ばした。

 大地を守る会では、メインのターゲットである二人暮らしのシニア層に向けた企画を強化。“お二人様”をキーワードに、季節のイベントを自宅で楽しむ商品や、高い健康意識に応える発酵系食品や旬の食材などを充実することで、コロナ特需がひと段落しつつある中でも高いARPUを維持することができた。らでぃっしゅぼーやは、かねてより進めていたオペレーションの改善が今期ようやく完了、来期以降新サービスの構築を積極的に行う見通しだ。

いよいよ10月稼働「新海老名ステーション」

 来期施策の目玉となるのは、オイシックスの新物流ステーションの稼働開始だ。キャパシティが逼迫した21年3月期、急遽各地に配送センターを設け対応したが、10月以降新たに稼働する「新海老名ステーション」に順次集約していく。新ステーションの稼働によって配送キャパシティは21年3月比で倍増を見込む。来期は移行期間のため一時的に利益率の悪化が予想されるが、一元化が完了すれば物流費が約1%削減される見通しだ。また、配送については、19年にヤマトホールディングス(東京都/長尾裕社長)と資本提携を行っており、今後も協力して効率化を推し進める。

 事業別では、カスタマーエクスペリエンスの強化をテーマに、オイシックスではより購入しやすい低価格帯商品の強化や、賞味期限の長期化や冷凍キットの拡充を行う。品質にこだわる分、ミールキットなどを含めてやや高価格帯のラインアップが多いオイシックスだが、顧客の離脱につながりやすいボトルネックを解消することで、会員の定着をより強固にしたい考えだ。パープルキャロットでは、ヴィーガン食やプラントベースが市民権を獲得しつつあることを踏まえ、従来のミールキットに加えて、より即食性の高い商品を増やす。

 「2020年は食品eコマース元年といえる年になったと感じている。さまざまなサービスがあるが、その中でお客さまにとってよりプラスになるようなサービスを提供していきたい」と高島社長は発表を締めくくった。