新型コロナ禍(COVID-19)でも適応する需要計画と在庫マネジメントとは
SAS Institute Japan 株式会社
ソリューション統括本部 エンタープライズアナリティックスプラットフォーム コンサルタント
阿保匡司 氏
ROIを意識することが重要
SAS Institute Japan(以下、SAS)は、データ分析、統計解析の分野で44年の実績がある。とくに需要予測では、グローバルレベルでの知見、ノウハウを有している。そのもとデータ分析、アナリティクスのソフトウェア、プラットフォームを提供しているほか、またそれらを使った実証実験やシステム導入などコンサルサービスといったサービスを行っている。
今回は流通業におけるデータの活用方法を紹介する。流通業のバリューチェーンでは、品揃えをどうするか、どこにどれだけ在庫するのか、いかに価格設定するかといったように、様々な意思決定が発生する。これまでもデータを活用する企業は見られたが、かつての成功体験に基づくケースが大半だった。しかし、コロナ禍で個人や企業の考え方が大きく変わり、従来の手法が通用しなくなっている。これに対しSASでは、可視化、需要予測、統計解析、計画マネジメント、最適化などがキーワードのプラットフォームでお客さま意思決定を強力にサポートしている。
さてSCM(サプライチェーンマネジメント)領域のアナリティクスに触れたい。SCMとは、サプライヤー、工場、物流センターといった個別の機能、役割を持つ要素を繋ぎ合わせ、情報、モノ、カネの流れをムリ、ムダ、ムラなくマネジメントすることである。SCMは、客観的にどういった指標で評価されるのか。ある海外の調査会社では、ROPA(物的資産利益率)、在庫回転率、そして収益成長率という3つを挙げている(図表①)。
そのうち注目したいのは物的資産にフォーカスしたROPA。この指標を向上させるには、売上高を増やす一方、原価、販管費を下げるなどの取り組みが必要になる。具体的には欠品率の低減や業務効率の向上、在庫削減などがポイントとなる。いずれにせよこれら各種指標を参考にしながら、ROI(投資利益率)を意識することが重要である。
機会損失、過剰在庫を生む要因
SCMで問題を引き起こす要因とは何だろうか。具体的には、潜在ニーズとのミスマッチをはじめとする「顧客価値の変動」、需要変動、カントリーリスクなど「外からの変動」、組織の壁、事故・天災など「サプライチェーン内の変動」と多様だ。これらはリスクであり、放置すると機会損失や過剰在庫を生む。したがってサプライチェーンを効率的、効果的に運営するにはリスクを把握し対策を講じなければならない。つまりSCMは、高度なリスクマネジメントだと言える。
ここでは前述のROPAを改善させるため、需要計画と在庫コントロールに焦点を当てる。需要計画では、「需要予測」「部門間の調整」といった段階を踏み、最終的に在庫最適化における「最適解の算出」を導く。そのうち需要予測では、予測プロセスを標準化、また自動化するほか、商品特性に応じた予測手法の採用などがポイントである。部門間の調整では、部門間で需給調整して決定する合意プロセスの確立、需要予測精度を向上させるための評価方法と、改善プロセスの確立が重要。最後の最適解の算出でも、業務の標準化、自動化などが求められる(図表②)。
あらためて今回、述べたいくつかの重要なポイントを整理しておく。1つめはデータ活用によるSCMの高度化は経営マネジメントの目線で投資対効果、つまりROIを意識することが重要ということだ。2つめは、SCMを高度化するには、信頼性の高い需要予測に基づく需要計画をもとに、施策を推進することである。そしてそれらを実現するプラットフォームを整備できれば、機動的な意思決定が可能になる。
これらを各企業で実践するには高度な手法が必要になる。SASでは、それらのノウハウをプラットフォームとして製品にも盛り込んでおり、需要予測プロジェクトのコンサルティングサービスも提供しているので、お役立ていただきたい。
各プログラムの詳細
下記画像リンクから、各プログラムの詳細をご覧いただけます。